2015/12/31

昨日まで、娘と一緒に台湾を旅行してきました。

どういうことだと、目を疑うでしょうか?

これまで誰にも話していませんでしたが、ぼくには娘がいます。

しかも、17歳、高校2年生の。
こうして話せる日が来るとは思いもしなかったので、ぼくはその幸運に感謝しています。

大学1年生のとき、人生で初めての彼女が妊娠。
ぼくたちは思い悩んだ末に、産んで育てることにしました。19歳10カ月でぼくは父親になりました。

しかし、その先にどんな暮らしが待っているかも、決断の重さも理解できなかったぼくは、たった3年でその暮らしから逃げてしまいました。

罪悪感から、もうこの先の一生は幸せになることなどない、娘に会う資格などないとの思いで生きてきました。
恥ずかしくて、申し訳なくて、自分に娘がいるなどと周りに言うこともできず、そのことを知る知人が噂話をしているのではないかと、いつまでも怯えていました。
最後に会ったのは、3歳だった娘を動物園に連れて行ったとき。それから、毎月の養育費を送り続け、誕生日には手紙とプレゼントを送りました。その年頃の女の子はどんなものが欲しいかなと想像しながら。

やがて娘から1年に1回返事が届くようになりました。時々、運動会や遠足の写真がそえてありました。

小学校6年生になったころ、手紙には「お父さんへ」と書いてくるようになりました。
少しずつしっかりとした筆跡になり、漢字が増えてゆく手紙が1年に1度だけ届くのを楽しみにしていました。
娘と生き別れてからこれまでの間に、ぼくの人生にも変化がたくさんありました。
2011年に東日本大地震が起きた時、たくさんの人が無差別にあっという間に亡くなる様を見ました。
自分もああやって思いがけず死んでしまうかもしれない。死ぬ前にやりたいことは何か?と考えた時、娘にもう一度会いたいと強く願いました。
それから手紙のやりとりを経て、2013年の冬に12年ぶりに2人で会うことができました。
中学生になった娘は、ぼくと娘のお母さんに、あまりにそっくりな外見で、素直な性格に育っていました。ぼくのことを恨んで嫌っているのだろうと思っていましたが、まったくそんな風ではなく、お父さん、と呼んでくれました。

その時のぼくの妻はぼくに娘がいることを知ってはいたものの、久しぶりの娘との再会にぼくが喜ぶ様子に傷つき、2ヶ月後に家からいなくなりました。もちろん、他の原因もありましたが。

ぼくは、またひとりになりました。

毎年、世界を旅しているぼくは、娘も連れて行ってあげたいと思うようになりました。

秋に発表したCD「雨つぶと風のうた」のコピー文は「見せてあげたい景色があるんだ」から始まります。娘のことを思って書いた文です。


旅行中に、娘はいろいろなことを聞いてきました。

「私の名前の由来は? 私はお母さん似、それともお父さん似? 大学はどうやって選んで、どう過ごしたの?」

いまから受験生になる娘には悩みも多いことと思います。ぼく自身、高校二年生は自分に対して自信を持てず、一番悩んでいた苦しい時期でした。

ぼくは照れながらも「お父さんはね…」と自分を呼び、ひとつひとつ答えました。

娘に感じることは、生まれて来てくれて本当に良かった、これまで会えない間に怪我も病気も事故もせず、元気に育ってくれて良かった、ということ。
育ててくれたあちらの家族に心から感謝しています。


幼少期に一緒にいてあげることができなかったぼくに、いまから何を与えてあげることができるだろうか?
ぼくがいま親として何かを教えてあげられるとしたら、自分の大好きなことを見つけて、それをやり続けること。外国語を学んでたくさんの国の友達と交流し、思いのままに生きること。そんな父親の姿を見て、何かを感じてもらえれば嬉しいです。

自由に、のびのびと、思う存分に自分のしたいことをし、才能を活かして、元気に生きてほしい。それだけを願います。

この旅行は、ぼくの夢が叶った、人生でかけがえのない時間でした。


人生のシナリオにはこんな素敵なプレゼントが用意されているのですね。

壁やどん底に当たって、死んでしまいたいと思うようなことが何度もありました。
それでも、いつかは、みんなで微笑み会える日が来るのです。

もうすぐ娘は大学生。

娘のお父さん(ぼく)とお母さんが出会ったあの日まで、あとたったの1年と4カ月です。
不思議ですね。

この旅行のことを日記に書いて公開してもいい?と聞くと、娘は「いいんじゃない」と答えました。

だから、これで、ぼくにはもう隠して生きる必要がなくなりました。

これまで誰にも話していませんでしたが、ぼくには娘がいます。
とっても可愛い、自慢の娘です。





PS・今年は年賀状は出さないことにします。ついつい子供の写真を載せて、親バカをさらけだしてしまいそうですから。みなさんのもとに、幸せが訪れますように。

3 件のコメント:

  1. 新年快乐,祝你们父女两身体健康,万事如意!

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  2. 涙が出ました。そして勇気をもらいました。

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