11月上旬に、フランスのケルト文化圏のブルターニュ地方より、フルート
演奏家Jean-MichelVeillon(ジャン・ミシェル・ヴェイヨン)氏とギター演奏家
Yvon Riou(イヴォン・リオウ)氏をお招きして初めての来日コンサートを
企画しています。
本稿ではJean-MichelVeillon氏(以下JMV氏)について紹介し、皆様に
ブルターニュ音楽に興味を持っていただくきっかけとなれば幸いです。
お二人の演奏はこちらのYouTubeをご覧ください。これをBGMに読んで頂ければ
いっそうイメージが湧きやすいかもしれません。
ブルターニュ地方はフランス北西部に位置し、世界遺産モン・サン・
ミッシェル(聖ミカエルの山)があるノルマンディー地方のすぐ南にあります。
フランスの中にありながらケルト語の一種であるブルトン語が公用語として
使われ、独自の民族的アイデンティティを誇りとしています。
ブルターニュにはアイルランド音楽などケルト音楽とフランスをはじめ
とする大陸ヨーロッパ文化の影響を相互に受けた魅力的な音楽とダンスがあり、
フェスト・ノーズというダンスの集会が一年を通じて盛んに開催されています。
また、ロリアンのケルト音楽フェスティバルに代表されるように、全ケルト
地域との交流があり、ケルト文化の発信拠点でもあります。
ブルターニュの音楽ではアイルランドのリールやジグとは異なる、ガヴォット
やプリンやリデといった独特なリズムと踊りがあり、アイルランド音楽と共通
する様々な楽器で演奏されます。舞曲はアイルランド音楽よりも短い8小節や
16小節の曲を繰り返してメドレー形式で演奏します。繰り返す中で即興的な
変奏や掛け合いが行われ、シンプルながら奥深く、力強いリズムが特徴です
ブルターニュ音楽については日本ではほとんど知られることがありませんが、
フィドル奏者Kevin BurkeやFlookやLunasaといったアイルランドの人気ミュー
ジシャンが注目しており多大な影響を相互に与えあっています。
今回来日するJMV氏は木製フルート(いわゆるアイリッシュ・フルート)演奏家
です。ブルターニュには本来フルートの伝統はなく、JMV氏は幼少期はダン
サーそしてボンバルド(オーボエ族の伝統楽器)奏者としてスタートしました。
やがてアイルランド音楽の伝統音楽リヴァイバルに触発されフルートの演奏を
独学で始め、Matt MolloyやSeamus Tanseyといったアイルランドの名手の演奏に
影響を受けつつ、その演奏法をブルターニュ伝統音楽に応用し、ブルターニュ
音楽におけるフルート奏法を確立した開拓者です。JMV氏の後には多くのフルー
ト奏者が育ちました。現在のケルト音楽シーンを牽引するSylvain Barou氏も
そのひとりです。
JVM氏は80年台にバンドKornog(コルノグ)で一世を風靡し、アメリカのGreen
Linnet社を通じて日本にもCDが紹介されたので、ご存知の方も多いことで
しょう。
JMV氏の音楽の魅力は、ブルターニュ音楽の伝統と精神に深く根ざしたその
芸術性の高さです。それは踊りの伴奏としての音楽でありながら、心の奥深く
に沁み入る深い音色と表現を備えており、日本の尺八の古典音楽や水墨画の
世界を思わせるような渋さを感じさせます。
JVM氏はケルト音楽だけでなく、中近東や東洋の音楽にも大きな影響を受けて
いるというのも頷くことができます。
今回の公演では初来日ということで、JMV氏に日本の伝統音楽を存分に
楽しんでいただこうと、和太鼓、雅楽、尺八、能管など日本の伝統音楽奏者
とのジョイントを企画しました。日本音楽とブルターニュ音楽を通して聴く
ことにより、聴衆はそこに多くの共通点を見出すことと思います。
また、特別にブルターニュ音楽とフルートのワークショップを、京都と
東京で企画しています。
詳細についてはこちらからご覧ください。
https://celtnofue.com/about/jmv.html
今回は私の自主企画公演のため、次回はおそらく無いと思われます。
特にすべてのフルート奏者、笛愛好家には足をお運びいただきたい、非常に
重要なコンサートであることは間違いがありません。
ぜひお申込みをお待ちしています。