2016/03/25

Dixon フルート/ロー・ホイッスルについて

UKの笛メーカーDixon社に、フルートとロー・ホイッスルを東部管を付け替え、両方が楽しめるセットという製品があります。  (画像はDixon社から)





こちらの製品ですね。
https://www.tonydixonmusic.co.uk/products/tb022/d

日本円にして2万円未満なのでとても安く、ロー・ホイッスルやアイリッシュ・フルートに憧れている人が飛びついてしまいそうな、魅力的な楽器です。僕がアイリッシュを始めたころから存在していましたので、ロングセラーなのだと思います。
 
プレーヤーとして、Dixonの笛は安かろう悪かろう…という印象を個人的には持っていましたので、自分自身は買ったことはありませんでしたが、 先日、試奏する機会がありました。

結果的に、残念ながら思った以上に音程が崩れている笛だということがわかりました。

こちらはロー・ホイッスルのとき。




こちらはアイリッシュ・フルートのときです。



 笛は息の強さでなんとでも音程が変わりますし、フルートの場合は息の角度を調節してさらに大きく音程を変えることができますが、補正可能の範囲を超えています。

そもそもオクターブが合わない(2オクターブ目が低い)というのは、笛としては致命的な欠陥です。
 フルートの頭部管のコルク位置をずらしても、改善はみられませんでした。

管体を共有するのは一見経済的なアイデアに見えるのですが、本来はロー・ホイッスルは円筒管、アイリッシュ・フルートは円錐管ですし、それを円筒管だけでまかなうのは無理があります(それ以前にロー・ホイッスルとしても音程が悪いので内径や指孔のデザインに問題がありそうですが)。

この笛で音程良く吹くには息の調節に過度に依存しなくてはならないわけで、そのエネルギーを表現に注ぐことができれば、もっとよい演奏ができるはずです。そして、この笛で練習していると、おかしな息の癖がついてしまい、きちんとした楽器を演奏した時にむしろ音痴になってしまいそう・・・。

もちろん、「変わった音程の笛」としてはマトモな楽器ですし、「息で音程を調正するためのトレーニングギブス」みたいなエクササイズ・マシンとしても、立派な商品です。


この結果を信じるかどうか、どう受け止めるかについては、皆さまに委ねたいとおもいます。

そして、貶めるためにわざとおかしな吹き方をしているのだろう!と思う方は、むしろ安心してお使い頂ければと思います。




2016/03/10

名もなき旋律

音楽が大好きでしかたがない人にとって、人生の中で音楽をどう位置付けていくかというのは、なかなか悩むべき問題だ。

若いころは自分の才能を信じて、ひたむきに情熱も時間も注ぎ込むのもよいだろう。それで、結果的に音楽家としての生活が成り立とうが、成り立たないだろうが、挑戦したことは無駄にはならないし、自分の人生に納得がいくはずだ。自分の責任において思い切り挑戦すること、それは人生の若いステージに許されたチャンスだ。

お金も家庭も職業もない20代の頃、自分は何でもできる、何にでもなれるのだと思っていた。
しかし人生は常に変化し続ける。就職する、家族が増える、家族の世話をするために時間がなくなる。自分の人生がすべて自分だけのものではなくなる。そうなったときに、音楽との向き合い方も変わってゆくのは当然だろう。

若いころの挑戦は戦いだ。今やらなければならない。今やらなければ夢に破れるのだ。自分が自分でなくなるのだ。

しかし、年を取ってからは、音楽にそんな気負いは必要がないことを知る。一時的に音楽から離れても、またできる時がくる。一時的に気持ちが離れることが合っても、またやりたいと思えたら、やればいい。音楽は仕事でも義務でもないのだから。

常に新曲を発表して、人気を維持する努力をしなくてはいけない音楽との関わり方は、幸福であり不幸だ。自分と音楽との自然な距離感が見えなくなるからだ。

僕が大好きな伝統音楽の世界は、そうではない。生活の中に、仕事の傍らに、仲間との会話の中に常に存在するもので、気負いや切迫感は一切ない。

植物写真家のいがりまさしさんは、学生時代にリコーダー奏者を志し、路上ライブをしながら全国を旅したそうだ。しかし現実にぶつかり、プロの夢をあきらめざるを得なかった。その頃に植物の世界の素晴らしさに目覚め、植物写真家になった。それから長い間、仕事や家庭のことで音楽から離れていたが、春の草花のように音楽への心がうずきだし、再び芽を吹いた。

今、いがりさんは、写真撮影のワークショップや自身の展覧会でギターを弾き歌ったり笛を吹いたりと、写真と音楽とを組み合わせたユニークな活動を展開している。その音楽は、学生時代から好きだったアイリッシュや、新たに出会った北欧伝統音楽の旋律を取り入れ、単に若いころの懐かしい音楽をしているどころではなく、今の時代に合わせて進化を遂げている。

先月、写真集「草と木の組曲」の発売に合わせて発表したCDアルバム「名もなき旋律」は、本人のアコースティック・ギターと笛(リコーダー、フケーナ)によるインストゥルメンタル曲集だ。
 アイルランドやスウェーデンの伝承曲、そして「Jack M.Skyfield」と名付けたご本人や、友人たちの作ったささやかな曲が収録されている。



: http://www.amazon.co.jp/dp/B01BKHXVJ8

優しく温かく、時に寂しげな旋律の数々はいがりさんの写真の名もなき草花の情景が思い出される。大作曲家の立派な作品でなくとも連綿と人々に愛され続けたさりげない名曲と、儚くもたくましい命を持った野の花の姿が重なる。春を前に植物たちのうごめきを感じる今の季節に、よく似合う作品だ。

そのいがりさんの著書「日本のスミレ」刊行20周年記念コンサートにゲスト出演することになった。スライドショーを見ながら、僕たちの演奏をお楽しみ頂く企画と聞いている。日頃は主役にならなくても、常にそこにあり美しい姿を見せている名もなき旋律と、名もなき草花との作りだす世界に、耳を傾け目を向ける日が、とても楽しみだ。

音楽とのちょうどよい距離感を見つけ、大好きな植物写真と組み合わせてユニークな活動をするいがりさんの姿は、ひとつの理想的な音楽との関わり方を見せてくれているのではないだろうか。






【日時】2016年4月3日(日)14:00開場 14:30開演

【場所】穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
愛知県豊橋市西小田原町123番地
電話番号 0532-39-8810

【入場料】前売り2,000円 当日2,500円

 【お問い合わせ、予約】 プラットチケットセンター 
窓口 0532-39-3090
オンライン http://toyohashi-at.jp
お問い合わせ 090-4088-1438

2016/03/01

かわいいフィンランド女子フォークグループ カルデミンミット大阪公演

フィンランドの女の子フォークグループKardemimmit(カルデミンミット )のコンサートを大阪の島之内教会で観てきました。

カルデミンミットは全員がカンテレを弾き語りする女の子4人のグループで、オリジナル曲を中心に、北欧の伝承歌や歌詞を洗練されたアレンジで歌い演奏します。

彼女達を知ったのは3,4年前でしたでしょうか。Emusicでたまたまダウンロードしたことがきっかけで、普段聴かない歌物のジャンル なのに、気に入ってしまってブログに書いたりラジオでかけたりしました。その彼女達が来日して生で聴ける日が来るなんて。

どんな音楽か、ぜひ動画を観てみてください。


大阪の島之内教会は、心斎橋駅から8分ほどの繁華街の中にあります。周りの大衆的な雰囲気とはうってかわり、建物の中は静寂につつまれていました。温かい雰囲気の木造の教会です。




100名くらいのお客さんでしょうか。余り知られていない彼女たちですが、今回は10か所公演するということで、これをきっかけにファンが増えるでしょうね。特製のポストカードを頂きました。




演奏は休憩なしの11曲とアンコールできっちり1時間でした。集中して楽しんだので短く感じましたが
実際に短かったようです。MCでガールズトークに盛り上がってしまうという噂でしたが、曲紹介だけにとどまり淡々と進んで行きました。

演奏については、言うことなしで素晴らしかったです。カンテレのアンサンブルと、美しい4声のハモリは、極上の響きです。コンサート・カンテレのベース音が深く、シンプルなカンテレの音色は宇宙を思わせる音色でした。カンテレの音は本当に綺麗。ハープやダルシマーよりもピュアな音だと感じます。

最新CD「ONNI」からの選曲が多めでしたが、どの曲もCDでよく聴いた曲だったので、心から楽しめました。 最近はコンサートを見に行く機会がめっきり減りましたが、やっぱり良いものですね。

演奏後、楽器が置いてあったので、撮影させて頂きました。不思議な形ですよね。








彼女達の公演はまだまだ続きますので、ぜひ見に行ってください!


http://www.harmony-fields.com/a-kardemimmit/