2016/05/31

望むものを得るために、あなたは何を差し出すか?

望むものを得るために、あなたは何を差し出すか?

去年の秋からこんな記事が話題になっている。
「生涯未婚率は職業によってこんなに違う」


この記事によると、たとえば教員と芸術家では生涯未婚率に2倍以上もの開きがあるそうだ。芸術家に関しては、僕の周りを観ていると既婚者が多いので実感はないけれど、芸術家は公私を分けず多くの時間を練習や創作に捧げるので、家庭を持たない選択をする人が多いのもうなずける。

女性では年収が高くなるほど未婚率が上がるらしい。すべての女性が結婚を望んでいるはずだという考え方を僕は持っていないけれど、そこには多くの結婚を望んでいる女性も含まれているはずで、何かを得るためには何かを犠牲にしなくてはならない、ということか。

神田昌典さんのビジネス小説『成功者の告白』によると、急速に会社が成功した経営者は、家族や社員に病気が見つかったり交通事故が起きたり、周りに不思議な「歪み」が出てくるものだそうだ。多くの人は短期間での成功を望むけれど、そのために犠牲が生まれるということだ。

会社は創業後3年で90%が倒産するというデータがある。
ただでさえ経営するのが難しいのに、波に乗った経営のかじ取りをするのは、それは難しいことだろう。一度大きな利益が出たら、事業を拡大していきたいと思うのは野心的な起業家には当然のことだ。その野心が命取りになる。

それを思えば自分は音楽で仕事をして10数年、正式に楽器店の経営を始めて4年、大きく事業が拡大することはないけれど、大きな失敗もなく成長しているのは、本当にありがたいことだ。周りから見たら低空飛行かもしれないが、幸せだ。いつまでも続けばいいと思う。

ココイチを創業した宗次さんは在職中はわき目もふらず自分の楽しみもそっちのけで経営に没頭したそうだけれど、僕にはその覚悟も忍耐力もない。いつ死ぬかわからない人生、楽しみを後に取っておくことはできない。

それでも僕なりの夢や野心は持っている。
今は覚悟を決める時期が来ていると感じている。

突然だが、あなたに自由に使える大金があれば、何をしたいだろうか?

今の僕は家族を養ったり介護をしたりする必要がなく、親のお金で暮らしていた大学時代よりも人生で一番自由な時代を過ごしている。家も車も必要なく、世界一周旅行も行こうと思えば行ける身分だ。しかしいざそうなると、夢に見た旅行にすら行きたい気持ちがなくなった。

今、自由なお金があればやりたいことは、音楽の本を出版すること、そしてもっと先の話として、伝統音楽センターを設立することだ。どちらもそれなりのまとまったお金が必要になり、利益が生まれるかどうかは分からない。自分がやりたいことであり、誰かに喜ばれたり役に立つ確信を持てるのなら、信念をもってやるしかない。今年は自費で4、5冊の本を出版したいと思っている。

フリーランスの仕事の仕方には、農耕スタイルと狩猟スタイルがある。うさぎが好きな僕は、明らかに草食系の農耕スタイル。でも、農耕民が実際に収穫を得られるまでには長い投資が必要で、それには厳しい夏の暑さや乾きを乗り切らなくてはいけない。毎月、たくさんのお金を支払って、不安に身動きが取れなくなりそうになる。


自分の望むものを得るために、僕は自分の大切なものをどれだけ差し出せるのか?

今が覚悟の時。
この試練をクリアしたものだけが、望んだものを得られるのだと信じて、仕事をするのだ。

2016/05/13

Flookの京都磔磔のコンサート

Flookの京都磔磔のコンサート

歴史のある良いバンドを見るのは、彼らの音楽の変遷と自分の人生を重ね合わせ、振り返りこれからを見つめるような気持ちにさせられる。

Flookを初めてライブで見たのは2000年、アイルランドのカウンティ・クレアのドゥーリンという、小さな村だった。

田舎なのに、いや、田舎だからなのか、伝統音楽の聖地のひとつとされ、Magnetic Musicという、おそらくドイツの音楽レーベルが経営するCD店兼カフェがあった。

たまたまアイルランドを旅行中に本屋で買ったIrish Music Magazineで彼らのライブがあると知り、あんな田舎でと半信半疑で観に行ったのだが、 至近距離の生音で観たライブは、人生のベスト・ライブになった。
ちなみにその時一緒に観に行ったのはバウロンのトシとアメリカから旅行中だったフルートのSteph Geremireだったけど、彼らも今は有名なプレイヤーになった。

その次は、名古屋で。NHKのカルチャー教室の明るい空間が妙に不釣り合いで印象的だった。調べると2006年だったようだ。その時は自分は彼らのようなバンドを目指して頑張ってたっけ。

Flookは今年で活動21周年というから、1995年結成なのか。そう言えばみんな年相応な顔になってきた。

Flookが再結成、しかも京都でライブと聞き、絶対に見逃せないと思った。

ライブは大半がこれまでに発表したHavenとRubaiのCDからの曲で、2,3曲の新曲があった。演奏は相変わらず完璧に素晴らしく、休憩なし90分のライブはあっと言う間に感じられ、大満足だった。海外のアーティストは、この形式が多いようだ。

Brianの神がかった笛、Sarahの絶妙なサポート、EdとJohn-Joeの最高に気持ちいいリズムのコンビネーションは、いつも変わらない。
昔はBrianの笛に釘付けになっていたけれど、今回は他の3人が何をしているか、どういう役割なのかをじっくり観て聴いて考えて楽しんだ。

いつもサポートにまわるSarahがいなくても形は成り立つのかもしれないけれど、やっぱりSarahとのダブルフルートじゃなきゃFlookにはならない、とか、このバンドの主役は実はリズムの2人なんじゃないかと思った。

あと、みんなが缶ビールを飲みながら演奏する中で、Brianはペットボトルの水だけ飲んでいたのも印象に残った。やはり、相当ストイックなんだろう。たぶん、この人死ぬまで音楽の道一途なんだろう。
Sarahはヨガをするそうで、やっぱり…という感じ。そして、たぶんベジタリアンじゃないかな(勝手な予想です)。
John-Joeは表情はひょうきんだけど、一言も喋らなかったね。意外にシャイで律儀な性格なんじゃないかな。Edは柔らかい印象になったね。

新曲や新しい発想が少なかったので新鮮さという点では少し物足りなさがあったけれど、長年のファンとしてはマスターピースの数々を変わらず聴けて嬉しい。
15年前に発表したCDの曲が今も古びて感じられないのは、彼らがあまりにも先を行っていたから、そして本当に良いものは不変だからだろう。
お客さんに若い人が多く、古いCDにもかかわらず行列を作っていたのは、解散後も新しいファンを獲得し続けていたからだろう。

人生にはいろいろ起こるものだけど、怪我も病気も破滅的な喧嘩もせずに21年後にも演奏を続けているというのは、奇跡のように思う。それだけでもバンドに感謝したいくらいだ。

来年は新しいCDを出すという。
なんだか別れた芸能人が再婚して、さらに子供が生まれるみたい。本当に楽しみだし、おめでとう、と祝福したい。

2016/05/09

お店を持ちたい ~Trad. Cafe構想のお話~

毎週のようにツアーに出かけた3月と4月でしたが、5月はコンサートが少なめで、のんびり。
たいてい家にいながら、練習したり、楽譜を書いたりと過ごしています。

こんな時は、オンラインの楽器店「ケルトの笛屋さん」のコラムや楽譜を書いたり、今後の構想を考えるのにぴったりな時間。

ケルトの笛屋さんは、上岡店長の体制になってから4年目となりました。
2人体制になって仕事の分担がしっかりとでき上がり、お客様がついてお陰さまで毎月の売上も安定してきました。
去年にはホームページの大規模な改修があり、システム面でも強化されました。

3年前に配り始めた無料の教則本10,000冊はあと残り数百冊となり、「地球の音色」も販売ペースが落ちることなく、ティン・ホイッスルはさらに普及したと実感していますが、まだまだ伸びしろあるとも思っています。こちらも引き続き、力を緩めることなく続けていきます。

ティン・ホイッスルの普及がひと段落する今年は、アイリッシュ・フルートの年と定めて、教本の発表や資料の充実をさせます。それから、少しずつバグパイプの普及も強化していきます。


ネット通販は今後も可能性がある分野なのですが、5年後10年後を考え、かねてから実店舗を持ちたいと考えてきました。楽器は音楽家の体の一部でありパートナーです。本当であれば見て、触って、試奏して、聴いて、慎重に選びたいはず。

ですが、国内ではそうやって選べるお店はほとんどありません。ショウルームがない通販だけでここまで売れているのは、むしろ例外的なことだと思うんです。

お店を開くその時には、笛だけではなく、伝統音楽や古楽で使われる各種の弦楽器、蛇腹楽器、打楽器も取り扱い、専門スタッフが接客できるようにしたいと思います。伝統音楽のCDや楽譜も、見て選べるお店はありませんから、取り揃えたいですね。特に、日本人奏者の音源には力を入れたいです。

僕は昔からアイルランドの楽器店に行くと、とってもわくわくしていました。小さな店でも、音楽にかけるみんなの思いが詰まっています。店員さんと会話したり、メンバー募集の張り紙を見たり、CDを聴かせてもらったり。パブと楽器屋さんはミュージシャンが集まりほっとできる、巣のような場所です。



この写真は、ロンドンの楽器店「ホブゴブリン・ミュージック」。こんな、ヨーロッパにある小さな可愛らしいお店がいいですね。

せっかくなら楽器を売るだけでなく、ライブやレッスンやレクチャーが行われたり、音楽好きが集まってちょっと喫茶できる店だといいのですが、いきなりそこまで大風呂敷を広げるわけにもいかないので、いつもの通り小さく初めて、長く続けて、大きく育てていきたいと思っています。

 こんな楽器店を40歳の節目にめたいと思いますが、それまでに良く考えて、しっかり計画して、開店資金を貯めていきます。今日、候補地の下見に行ってきます。

来年は、可愛らしい楽器店を求めてヨーロッパ各地を旅したいな。どこかに良いお店があれば、教えてください!