望むものを得るために、あなたは何を差し出すか?
去年の秋からこんな記事が話題になっている。
「生涯未婚率は職業によってこんなに違う」
この記事によると、たとえば教員と芸術家では生涯未婚率に2倍以上もの開きがあるそうだ。芸術家に関しては、僕の周りを観ていると既婚者が多いので実感はないけれど、芸術家は公私を分けず多くの時間を練習や創作に捧げるので、家庭を持たない選択をする人が多いのもうなずける。
女性では年収が高くなるほど未婚率が上がるらしい。すべての女性が結婚を望んでいるはずだという考え方を僕は持っていないけれど、そこには多くの結婚を望んでいる女性も含まれているはずで、何かを得るためには何かを犠牲にしなくてはならない、ということか。
神田昌典さんのビジネス小説『成功者の告白』によると、急速に会社が成功した経営者は、家族や社員に病気が見つかったり交通事故が起きたり、周りに不思議な「歪み」が出てくるものだそうだ。多くの人は短期間での成功を望むけれど、そのために犠牲が生まれるということだ。
会社は創業後3年で90%が倒産するというデータがある。
ただでさえ経営するのが難しいのに、波に乗った経営のかじ取りをするのは、それは難しいことだろう。一度大きな利益が出たら、事業を拡大していきたいと思うのは野心的な起業家には当然のことだ。その野心が命取りになる。
それを思えば自分は音楽で仕事をして10数年、正式に楽器店の経営を始めて4年、大きく事業が拡大することはないけれど、大きな失敗もなく成長しているのは、本当にありがたいことだ。周りから見たら低空飛行かもしれないが、幸せだ。いつまでも続けばいいと思う。
ココイチを創業した宗次さんは在職中はわき目もふらず自分の楽しみもそっちのけで経営に没頭したそうだけれど、僕にはその覚悟も忍耐力もない。いつ死ぬかわからない人生、楽しみを後に取っておくことはできない。
それでも僕なりの夢や野心は持っている。
今は覚悟を決める時期が来ていると感じている。
突然だが、あなたに自由に使える大金があれば、何をしたいだろうか?
今の僕は家族を養ったり介護をしたりする必要がなく、親のお金で暮らしていた大学時代よりも人生で一番自由な時代を過ごしている。家も車も必要なく、世界一周旅行も行こうと思えば行ける身分だ。しかしいざそうなると、夢に見た旅行にすら行きたい気持ちがなくなった。
今、自由なお金があればやりたいことは、音楽の本を出版すること、そしてもっと先の話として、伝統音楽センターを設立することだ。どちらもそれなりのまとまったお金が必要になり、利益が生まれるかどうかは分からない。自分がやりたいことであり、誰かに喜ばれたり役に立つ確信を持てるのなら、信念をもってやるしかない。今年は自費で4、5冊の本を出版したいと思っている。
フリーランスの仕事の仕方には、農耕スタイルと狩猟スタイルがある。うさぎが好きな僕は、明らかに草食系の農耕スタイル。でも、農耕民が実際に収穫を得られるまでには長い投資が必要で、それには厳しい夏の暑さや乾きを乗り切らなくてはいけない。毎月、たくさんのお金を支払って、不安に身動きが取れなくなりそうになる。
自分の望むものを得るために、僕は自分の大切なものをどれだけ差し出せるのか?
今が覚悟の時。
この試練をクリアしたものだけが、望んだものを得られるのだと信じて、仕事をするのだ。