2018/12/19

音楽教師日記 大人の習い事の楽しみ

<音楽教師日記 大人の習い事の楽しみ>

先日は名古屋のグループレッスンの毎年恒例のクリスマス会がありました。

この会は毎年12月にいつもの貸し教室を使って開催しており、2時間で生徒さんの発表、ゲスト講師を招いてのコンサート、茶話会をします。今年はハープのnamiさんをゲストに迎え、生徒さんの発表の伴奏とコンサートをしてもらいました。

受講生それぞれが主体的に興味のあることや好きな曲を持ち寄って発表し、それぞれの方法で音楽を楽しみ、進歩していることに心打たれました。巧拙よりも、音楽への情熱が、アマチュアの皆さんの最高の魅力だと思います。

受講生は中高年の女性が中心で、長い方は震災前にカルチャーセンターで講座をしていた頃から続けてくださっています。

当時のカルチャーセンターでの講座は一般向けだったので、常に入れ替わりがあり人が定着せず、やがて人数が少なくなり打ち切りとなりました。しかし練習を続けたい熱心な生徒さんのおかげで、名古屋市で独立して続けられることになりました。それから7年ほど、今では僕の好きなケルトの伝統音楽を練習しています。

カルチャーセンター在籍中は会社が交通費を出してくれていたのですが、独立直後の生徒さんが少ない時期は生徒さんが個人レッスンも平行して受講してくださり、交通費をまかなうことができました。今ではお陰でキャンセル待ちの人気講座になりました。

名古屋で僕のコンサートがあれば必ず来てくださる応援団の皆さん。これでも教室では一番若い僕にとってはお姉さんのような存在で、そのとおりの"hatao sisters"というグループで月に1回集まって練習したり、ボランティア演奏に出演したりしています。

それぞれが個性的な面々で、演奏技術もやりたいこともまちまちですが、お互いを認めあって受け入れあい、和気あいあいと仲良く音楽を楽しんでいることが、僕にはとても嬉しく思います。みなさん、育児や介護、お仕事、ご病気などさまざまな苦難がありながら、それでも音楽を楽しみに来てくださいます。

大人の習い事にはいろいろな関わり方があります。何かの技術や知識を習得することを目標に取り組むことも、新しい習い事に次々と挑戦して自分に合うものを探すことも、意義があることです。

しかしこと大人が音楽を習うことに関しては、彼女たちのように家庭や職場以外で仲間や居場所を作り、生活の中に音楽のある時間を楽しむことが尊いのです。その中で成長があり、新しい曲や知識との出会いがあります。先生として僕はそのお手伝いをさせてもらっています。

何歳からでも始められる、そしてすぐに楽しむことができ、長く続けられる。それが伝統音楽の楽しみです。それを教えてくれたのは、名古屋や奈良の生徒さんの皆さんです。

僕の時間には限りがあるのでこれ以上レッスンを増やそうとは考えていませんが、ご縁があって受講してくださる方々との絆は自分がどんなに忙しくなっても大切に守っていきたいと思っています。

2018/12/14

音楽家日記 コミュ障でもコンサートがしたい

<音楽家日記 コミュ障でもコンサートがしたい>

最近読んだ経営書は、新規のお客様を増やしリピーターになってもらう方法がテーマだった。

中身はお客様の名前を覚えて呼んであげましょうとか、来店したお客様にお礼状を送りましょうといった陳腐なアイデアなのだけど、要するにお客様と心理的に近づこうということで、これってコンサートの集客にもあてはまることだ。

毎回コンサートの集客のためにチラシを撒き、ホームページやSNSで宣伝し、お客様リストにメールを送っている。

しかしコンサートではお客様とゆっくり話したり、心理的に近づくことができない。単にコンサートの日は時間がないこともあるが、特に僕の場合は極度に人見知りなので、自分から話しかけに行くことができない。

僕は自分の楽器店の店番をしていても、お客様が来店すると心拍数が上がる。長年の生徒さんでも、名前を呼ぶだけで緊張する。

コンサートでは、街で他人に話しかけるのとは違って自分を知っていて自分の音楽に興味がある方が来ているのだから遠慮する理由はないのだけれど、それでもおじ気づく。

むしろお客様のほうが音楽家に対して遠慮する気持ちがあるだろうし、音楽家から話しかけてもらったら嬉しいには違いないだろうけれど。

僕はとにかく人の顔と名前が覚えられない。
だから「初めてですか?」と訊いて「3回目です」と答えられたら? 「山田さん、いつもありがとうございます。」と近づいて、「いえ、松田ですけど。しかも初めてですけど」と答えられたらどうしよう? などと考えてしまう。

そのくせ人前で演奏するのも、大勢の人を前に話すのも平気なのだけど、これは慣れの問題なのか。

だから、僕は決して「お高く止まっている」とか、「お客様に興味がない」わけではないのです!

そんなコミュニケーション障害ぎみの自分でもコンサートはしたいし、たくさんの人に音楽を聴いてほしい気持ちがあるから、工夫をしている。

それはSNSやYouTubeや出版物や楽器店を通じて広く知ってもらうことで、お客様と1対1の関係を築く一本釣りに対して、網を広げるような感じなのかもしれない。釣りの例えが良くなければ、電話とラジオの違いでも良いのだけど。

そのお陰で全国どこに行ってもお客様に来ていただけるのだけれど、それは最初のきっかけにすぎず、そこからファンになっていただき、次回また来ていただけるかは、その時の自分次第なのだ。

演奏が良いことはもちろんだけど、お客様をおもてなしする気持ち=ホスピタリティが大事だ。それは一人ひとり話しかけるとかでなくても、ステージでの振る舞いとか、MCとか、音楽に向き合う気持ちとか。お客様に良い音楽を楽しんでほしい気持ちって何も言わなくても伝わるから。

人気ってわかりやすいから、面白い。

「いい音楽をしているから」「上手いから」「話題だから」が新しいお客様と出会うきっかけになっても、それだけでは次に続いてゆかない。毎回、楽しみに来てくださる熱心なファンの方、そしてそのファンの方がまた新しいお客様を連れてきてくださることが、確実に音楽の輪を広げる力になるのだ。


何度も飽きずにコンサートに来てくださるファンの方々には深く感謝しています。そして、もう少し、お客様の気持ちに寄り添えるように、自分も少しだけ変わりたいと思います。

2018/12/09

2.24 フルート・ミーティング2019のお知らせ

2/24、東京で豊田耕三君、熊本明夫君たちとアイリッシュ・フルートのイベントをします! アイデアや技を出し惜しみなくシェアします。アイリッシュ・フルート吹きみんな大集合!

≪ケルトの笛屋さん☓CCE Irish Flute Meeting 2019 ≫

【日時】2019年2月24日(日)13時~21時

【会場】中野サンプラザ グループ室1とグループ室2
東京都中野区 中野4丁目1−1
https://www.sunplaza.jp/tra_cul/gloup/

【料金】通し券6,000円(学生5,000円)
定員25名ですので、事前にお申し込みください。

【内容】アイリッシュ・フルートに興味を持つすべての方のための催しです。国内で活躍する奏者4人を講師に迎え、ワークショップ、コンサート、ディスカッション、セッション、試奏会や交流をします。この日にしか得られない学びがきっとあるはず!

楽器をお持ちの方はD管をご持参ください。また、モダンフルートでの参加、聴講のみの参加も可能です。楽器の貸出をご希望の方は、事前にお申込みください。

【プログラム】
グループ室1にて

13:00 受付開始

13:30~14:20 熊本明夫「キーレスフルー党」
キーレスフルートの半開運指を駆使してGmからEmajorまでの色々な
曲を吹きます。

14:30-15:20 「ノリ・リズム」(予定)
笛でダンスチューンを演奏する上で大切な要素について、特にJigとReelを取り上げて説明します。

休 憩 (試奏など)

16:00-16:50 豊田耕三「アイリッシュフルートを演奏する身体について」
息、指、腕、肩、首。身体への負担の大きいこの楽器をより楽に自由に
演奏する方法を身体論から紐解きます。

17:00-17:50 hatao「アーティキュレーションと装飾音」
伝統音楽を演奏する上で重要な2つのテーマを整理し、実践する講座。
フルート奏者の演奏スタイルの分析。

18:00~19:00 ディスカッション (MC:hatao)
参加者と講師の質疑応答、楽器、スタイルやレパートリーについて

グループ室2へ移動

19:00~19:50 講師によるフルート・コンサート

20:00~20:50 参加者とのミニ・セッション

21時退出

★常時フルートの試奏・展示、CDや教則本の販売を行います。

【予約先】
hatao@irishflute.info (ケルトの笛 hatao)

主催ケルトの笛屋さん、協力CCE

2018/12/03

たった今、僕の身に起きた怖い話

※実話です。怖い話が苦手な人は読まないでください。

月曜日の仕事を終えて、家に帰るときだった。

雨が振る生温かい冬の夜、帰り道のきつい坂を登って、家まであと20メートルという暗い夜道を、向こうから白髪の老婆が杖をつきながら、とぼとぼと歩いてきた。

夜9時を回ったこんな夜更けに、散歩じゃないし、なんだろう……。と思っていたら、向こうも僕のことをじっと見てきて目と目が合ったので、「こんばんは」と挨拶を交わした。丸い顔をした、やさしそうなお婆さんだ。

お婆「娘家族に会いに来たんだけれど、道に迷ってしまって……。ここから、どうやったら出られますか?」

僕「どうやって来られたのですか?」

お婆「バスで来たんです」

僕「そこの坂を下ったところにバス停がありますが、1時間に1本しかありませんし、暗いし雨が降って坂道は危ないから、タクシーを呼びましょう」

その場で電話をかけ、タクシーが来るまで雨宿りのために家に上がってもらおうとしたが、お婆さんは固辞し、荷物を軒先に置いて待つのだと言う。手にはケーキと花束が入ったビニル袋を提げていた。

お婆さんの娘家族は、何十年も前にこの地域に住んでいたそうだ。お婆さんがどこから来たのか聞いたが、「梅田のほう」と言ったきり、その先が思い出せない。明るいうちにバスでこの山の上までやってきて、坂道を転んで手を擦りむきながら、何時間もずっと娘の家を探していたそうだ。

娘さんとはどうして連絡が取れないのか? お金や、住所が分かるものは持っているのだろうか…。いろいろな疑問が頭を駆け回る。

お婆さんが言う。「このあたりも長い間見ないうちに、ずいぶんと変わってしまってねえ……。娘の家は、すぐそこの、坂の上にあったはずなんだけどねえ。何度も坂を行き来しているのに、見つからないの」

そう言って指さした暗がりのきつい坂は、上がると行き止まりで、坂の左手には数戸の家があるだけ。そして坂の右手は山だ。突き当りには、20年以上前に、土砂崩れで若い夫婦と子供二人の一家四人が生き埋め死した家で、すでに取り壊されて現場は鉄壁で囲われているのだった。

僕は背筋がぞくっとした。

このお婆さんはきっと、娘家族が亡くなったことを忘れてしまって、会いに来たに違いない。そして、鉄壁で覆われているから、家が見つからないのだ。

ほどなくしてタクシーがやってきた。僕は運転手に1000円札を渡して、「このお婆さん、道に迷ったようなんです」と言って、駅まで送るように伝えたのだった。

明日、明るくなったら、お婆さんの代わりにお線香を挙げに行ってこよう。

2018/12/02

音楽起業のすすめ

先日、大阪の経営コンサルタント/税理士兼社労士さんとの初めての面談をした。音楽に理解のある良い方と巡り会えて、ご紹介くださった方には感謝している。

「ケルトの笛屋さん」は来年には会社化する予定なので、法人登記、会計、労務や社会保険、在庫管理、マーケティングについてアドバイスをいただき効率化して、僕は思い切り自分の得意分野に集中したい。

経営は楽しい。人間的に成長させていただき、たくさんのことを学び、自分の大好きなことで人に喜ばれ、価値を生み出すことができる。

笛屋さん6年目にしてようやく経営者らしいマインドになってきたが、最初から起業を目指していたわけでない。音楽家なら誰でもやっているように、生徒さんに対面で楽器(ティン・ホイッスル)を売ることから始まった。それは1本数百円の利益だったけれど、その蓄積と延長線上に今がある。
生徒さんのためのオリジナル教材を開発し、調査・研究したことをホームページにまとめる……。そんな自分の大好きなことを続けていたところ、上岡君にECサイト(通販)を任せることになり、そこからどんどん仕事が広がっていった。

僕は人間関係が苦手で、組織では生きてゆくことができない人間だ。縦の関係がいやで、上司や先輩から偉そう指図にされるのは大嫌い。だから上下関係なく、好きな人だけとゆるく横につながる音楽家は性に合っている。
 音楽家であれば時間が、働く場所が、そして人間関係が自由になれる。一方で音楽家は収入を得るのが難しい。だから多くの音楽家がやむにやまれずアルバイトをしたり、望まない演奏の仕事を受けている。しかし僕はやりたいことしかやりたくない。

そこで起業である。事業をすれば収入を補完することができる。いまどき副業をするのは簡単で、民泊ビジネスやブログやYouTubeの広告収入など色々な手段とあるが、それが音楽に関係したことであれば、お互いに好循環を産みだすことができる。自分の軸足はあくまでも音楽家だが、音楽家であることが事業家としても計り知れないプラスになっている。つくづく音楽家であり事業家であることが、自分には最適解だと感じている。

20歳代前半はサラリーマンとの兼業音楽家を試みたこともあったが、アルバイト経験しかなかった自分の経歴書はスカスカで、条件の良い会社に務めることは難しく、自分で稼ぐ道を選ぶしかなかった。

昨今は長時間労働やストレスの多い労働環境によって心身の健康を害する人も多いという。その上、賃金は下がり続けている。税金負担率は五公五民で、勤め人は強制的に天引きされる。
起業はそういった人にとって人生を逆転させる最高の手段だ。うまくいけば健康的に暮らしながら時間・住む場所や仕事をする場所・お金・人間関係の自由を手に入れることができる。事業が成長すればサービスや商品、雇用や税金によって社会の役に立っているという自信も得られる。


今後は事業を少しずつ確実に成長させることで、プラスの輪を広げていきたいと気持ちを新たにしている。

2018/11/26

男と女

先日、京都にあるフランスのお菓子屋さん「トゥレ・ドゥー」にてhatao & namiでコンサートをしました。その後でオーナーシェフにお誘いいただき素敵なフレンチ・レストランで食事をしながらお話をしました。

「美しいものが大好き」というシェフは、つい最近お店のデザインをお菓子のような美しい内装にリフォーム。宝塚歌劇団が大好きで、2年前から週2回バレエを習い始めました。

もうじき60歳になるシェフ(ジャンミシェルさんと同じです)に、40歳なら今から全く違うことを始めて2つめの人生を生きられるよ!と励まされました。

バレエ教室は女性ばかり、お店のお客様も女性、従業員も女性というシェフとの話題は自然に男と女の違いに。

「男性は習わずに独学をする」「女性のほうが新しいもの好きで好奇心が旺盛」「男性は縦社会で優劣を決めないと喧嘩になるが、女性は横につながり共感し合う」などひとしきり男女の違いについて興味深い話をしたのち、お店を出ると空には綺麗なお月さまが。

思わず皆で「綺麗なお月さま!」と讃えていると、シェフが「男だと普通こういう話にならないものな」とぽつり。なるほどそのとおり、と思いました。

僕もシェフと同じく、共演者もお客様も生徒さんも周りは女性ばかり。男同士だとどうも居心地が悪く、うまく馴染めません。特に体育会ノリの上下関係は苦手で、一匹ウサギな性格もあって上には反抗し下には丁寧にしすぎてしまいます。だから男友達はほとんどおらず、ビジネス的な関係以上に踏み込むことができません。

こうして長年女性と接していることが多いからか、女性が良いと言うものが良いと思えるようになりました。人の内面には、生物学上の性や性的嗜好と別とは別に男性性・女性性があり、女性とともに生きているうちに内面の女性性が育ったのでしょう。

若い頃は男性的なエネルギーを持て余して手を焼いていましたが、最近になり、自分の内面の男性性・女性性が良い具合に統合されてきました。

これは自分の音楽にも影響を与えており、パワーやテクニックで圧倒するような時代を経て、これからは感覚的で精神的な方面に充実してゆくと感じています。

2018/11/24

日本の音楽が吹きたい


勤労感謝の日の今日、誘われて知人の篠笛奏者お二人のコンサート「風の彩 二管の綾」を見に行きました。

ポスター写真左の森美和子さんは私が学生時代からの知り合いで篠笛のプロ演奏家で日本各地の伝統芸能の篠笛を学んでいる方です。写真右の山口幹文さんは新潟佐渡の芸術集団「鼓童」の現役の笛奏者で、今年はコンサートをご一緒にさせていただきました。

今日のコンサートは無伴奏笛2本のみということで、民謡、自作曲、お囃子などを織り交ぜ笛2本の楽しみと可能性をたっぷり披露くださいました。

私は日本人でありながらケルト音楽の笛を吹いていますから、ヨーロッパを旅行すると日本の曲をリクエストされる場面が多いものです。そのような時に日本の音楽も吹けたら良いなと思うことがしばしばありますが、童謡などをそれらしく吹いてお茶を濁して済ませてきました。

日本の笛奏者では能管奏者の一噌幸弘さんと数年来親しくさせていただいますが、さらに去年に篠笛奏者の村下さんと出会ったきっかけで、今年は山口幹文さん、狩野泰一さんという篠笛の大ベテラン奏者とお引き合わせいただきコンサートをご一緒し、お二人の住む佐渡にも行くことができました。また龍笛奏者の芳村直也さんとも出会い、私の笛史上で大きなインパクトのある一年でした。

一噌さんには能管を吹くよう勧めて頂いていましたし、深い音色の尺八もまた魅力的です。そこで今年は自分も和笛に挑戦する年かなと思い、立平さんの篠笛を購入し狩野泰一さんのレッスンを見学させていただきましたが、それでもどの笛にも気持ちが動きませんでした。

お能はかつての武士の音楽、雅楽や神楽は神職の音楽、尺八は虚無僧の音楽。今は何を使って何を吹いても自由な活動が許される時代ですが、どうしても真面目に考えてしまいます。自分はそれらの世界と合うように思えない。そして誰かの家元に習いに行ったり、和笛奏者に転身して和装して舞台に立つ姿はどうも想像できない。やはり生活の音楽、つまり民謡が好きです。

そこで気軽に楽しめそうな篠笛なのですが、最近は篠笛でポップスや童謡やゲーム音楽を吹くほうが流行しているようで、そうでなければ特殊な音律や運指の伝統的な郷土芸能のお囃子笛という極端な選択肢となります。

何の和笛であれ近年流行りの西洋音楽の影響を受けた音楽には、どうも興味を持つことができません(奏者の方を批判しているわけではなく、あくまでも私の音楽的嗜好です)。西洋音楽的な和音進行や8小節ひとパートの構成を聴くと、とたんに萎えてしまうのです。

日本の笛の方を例にすると波風が経ちますから、韓国の笛で言うと、こういう奏者よりも
https://www.youtube.com/watch?v=RnXiNWALM54

こういう奏者が好みです。
https://www.youtube.com/watch?v=pEztEb1vf_s

伝わりますか。2つ目の笛は正真正銘の伝統音楽ですが、本当は伝統音楽を基礎にした芸術性の高い新しい創作音楽が好みです。

一方でお囃子は華やかで魅力的なのですが、曲数が少なく、短いフレーズを延々と繰り返して吹くもので音楽作品として舞台で演奏するものではありません。自分はアーティストとして作品を創り表現したい。自分が篠笛にのめりこめないのは、そういう理由だと理解しました。

そこで先日のブルターニュの伝統音楽を演奏するフルート奏者ジャンミシェルさんの音楽との出会いからひらめきました。
ジャンミシェルさんは、もともとなかったフルートをブルターニュ音楽に持ち込んで演奏スタイルを確立しました。それならば、日本にない木製フルートで日本の音楽を演奏するスタイルを模索したってよいのではないか。
フルートをある程度使いこなせる自分にとっては、今からまったく新しい和笛を始めるよりも、日本の笛の音律や奏法をフルートで演奏するほうが現実的だし自分らしい。それに日本の音楽にはない楽器なので、何をどう吹くのも自由だし誰に遠慮することもない。

この年末にようやく方向性が見えた思いです。これが何につながるのか今の自分にはまだわかりませんが、40代に入りましたし、ここからはライフワークとして日本の伝統音楽を調べ、学んでみたいと思っています。

とりあえず、来年キャンピングカーを手に入れたら夏に東北を周り、各地のお祭り囃子を見てきたいと考えています。

2018/11/20

説明不要な音楽をする

<また長文エッセーを連発しました、しかも毒を吐いていますから、読みたい人だけ読んでください>

 池田市のレストラン「ばんまい」での月例コンサートは特別だ。自分達演奏家が楽しむことを第一目的にし、お客様とその時間を共有するという信念でもう5年くらい続けてきた。

 入場料をいただくコンサートであればお客様に楽しんでもらえるように入念に選曲やリハーサルをし、曲についてお話をする。

 一方で「ばんまい」は入場無料・入退出自由で、解説は一切せず、リクエストにも応じず、一般的に知られた演奏することもない。
 演奏者とお客様は自由で対等な関係において音楽を共有する。お客様は他人の音楽鑑賞に迷惑をかけなければ、何をしながら聴いても良い。お客様が自分たちの音楽を気に入ったらチップをいただくこともある。

 自由だから思いつきで好きな曲を打ち合わせなく演奏したり、昔のレパートリーや初めて人前に出す新曲を披露することもある。不安定でリスクが高いが、新鮮で自分たちが飽きない。

 ところで先日ジャン・ミシェルさんの音楽について、コンサート会場のオーナーから「わかりやすい説明がほしい」とのご要望をいただいた。

 お客様が知っている「アイリッシュ」や「タイタニックの音楽」とは関係があるかと問われたが、彼らはそういったものとは関係がないため「ケルト音楽の最高峰デュオが初来日」とだけ説明して頂いた。

 音楽は頭で聴くものではないので、聴いてもらえば感動していただける自信はあるのだが、人は頭で理解して初めて行動するものなので、わかりやすく説明しないと来てもくれない。歯がゆい。

 ジャンミシェルさん達は伝統音楽を演奏するので、コンサートでは自分たちブルターニュ人のルーツや音楽の背景について説明をしてくれた。それで音楽への理解や想像の手がかりを得られたとお客様からは好評だった。
 しかし彼らの音楽は伝統音楽を素材にしながらも極めてユニークな発想と高度な演奏技術によって、全く説明不要な域に達していたし、仮に説明が一切なくても、その素晴らしさは必ず伝わったと信じている。

 あるイベント主催者は、プログラムの半分をお客様が知っている曲にしてほしいと演奏家に要求するそうだ。お客様をバカにするんじゃないと思う。それは「どうせ塩と砂糖をまぶして味の素を振っておけば美味いと思うんだろう」とお客を甘く見ている料理人のようなものだ。そして、こんなことを言うなんて、信念を持って活動している演奏家に失礼極まりない。

 ジャンミシェルさんの音楽を見て、僕は心に誓った。いつかあの「説明不要」な域に達したい。僕は僕だ。僕の音楽は僕の音楽だ。

 僕はアイルランド人演奏家でも、ケルト音楽や北欧音楽の紹介者でもない。「ケルトの風」とか銘打ったコンサートに呼ばれて「ダニーボーイ」をG調で「AABB、AABB+リフレイン」で演奏するのは恥ずかしい。酒と縁を切ったのに「アイルランドは酒場の音楽」と言ってダンス曲を連発するのも性に合わない。

 お客様に歩み寄って誰にでもわかりやすく音楽を伝えるのは、レッスンやレクチャーや教本や「ケルトの笛屋さん」のホームページで充分やっている。

 hatao & namiでは、説明ができない音楽をやる。心に深く届き、わけもなく泣きたくなるような音楽を目指す。個人的な体験や思いを語り、演奏する。それを聴きたいと思う人に、誠実に音楽を演奏したい。

  誕生日を迎えて人生残り少なくなってきたのだから、大好きな音楽くらい、好きなことをさせてほしい。

人生における無駄な時間について

あと2日で40歳になる。本当に時間の経過が速いし、自分も長生きしたなと思う。周りで病気にかかる人も多いのに、病気をせずに済んだのは幸運だ。丈夫に産んでくれた親に感謝したい。
誕生日の頃になると、自分の人生や現在地点を振り返る。最近よく思うのは、「人生における無駄な時間」について。
僕は大震災の2011年に、老いも若きも理不尽に亡くなったことを見て衝撃を受けて、儚い人生いつ死んでも悔いがないように生きてきた。ネットで「死ぬときに後悔すること」で検索すると、亡くなる前に人がどんな後悔をするのかを知ることができる。それを見て、後悔することを先にやった。
成長した娘に会った。自転車旅行をした。ヨーロッパを長期旅行した。楽器店を開いた。語学を習得した(来年は留学もする)。本を書いた。大好きな音楽のヒーローを呼んで一緒にツアーした。世界旅行とか、大舞台での演奏とか、会社を大きくするとか、まだまだ叶えたい目標はあるけれど、現状には充分満足している。
しかしもっと早くに目が覚めていれば、もっと早くに今の地点まで来れたと思う。人生は若い頃ほど柔軟で自由で吸収力があるので、若い時間ほど貴重である。
僕がこれまで40年近く生きてきて無駄だったと思う主な時間はこれだ。
(1) 苦手なことを克服しようとした
「好き嫌いなく食べなさい、苦手な人ともうまく付き合いなさい、不得意なことにも挑戦しなさい」と言われる。しかし苦手なことをすると苦痛を感じ、結局は克服できずに苦い思いだけが残ることが多かった。苦手なことを早期に見つけて、それを避けて、得意なことや好きなことに集中するほうが大事だ。
(2)自分とは合わないコミュニティに属した
自分を尊重しない人間関係に身を置いた。何をしても嘲笑われ、誤解された。怒りと悲しみと復讐心で心が黒く汚れた日々を過ごした。それでも、その関係が必要なんだと自分を騙して我慢した。どこかに自分を尊重してくれる人は必ずいるし、自分を必要としてくれるコミュニティはある。早く逃げるべきだった。
(3)人の評価を得るために努力した
人の評価は全くアテにならない。自分が嫌いな人が世間で良い評価を得ることはある。他人の助言は、結果に責任を取ってくれない。自分を曲げてまで人に好かれようとする努力は無駄だ。
(4)異性にモテようとした
人生の大半を「モテる=良いこと」だと思って生きてきたが、性的パートナーシップにおいて大切なのは相性だ。不特定多数の異性に好かれると、それだけ誘惑やトラブルが多く苦労するだろう(僕はモテないから無縁だったが)。それよりも、自分と相性の良い相手を見定めて長期にわたる良好な関係を築くことのほうがよほど大切だ。
(5)終わった恋愛をいじくりまわした
真剣に恋愛をしていれば、別れは死と同じくらい苦痛に感じるものだ。しかし、死んだ人が蘇らないように、終わった関係は戻らない。終わった関係をいじくるのは、墓穴を掘り返すようなものだ。そして関係が終わったことは、誰よりも自分が知っているものだ。
(6)本当は合わないと知っている人と友だちになろうとした
色々な種類の人と付き合えば得することがあるかもしれないという下心で本当は合わないと思う人のために時間を費やした。結局は努力が虚しく疎遠になり関係が消滅した。合わないとわかっている人とは1分も費やすべきではない。
(7)興味がなくなったことを惰性で続けた
読まなくなったのに毎月届く雑誌のように、興味がなくなった習い事、サークル、学問などがある。経済学にはサンク・コストという考え方がある。それまでに投資した時間がもったいないので、惰性で投資を続けてしまうというものだ。捨てなければ新しいものは入ってこない。損切りが重要である。
(8)Noを言えなかった
忙しいときに限ってかかってくる電話のようなものだ。「今忙しいので」の一言が言えなかったばかりに、大事な時間を奪う人がいる。友人や同僚のちょっとした頼み事とか、興味のない飲み会の誘いとか、セールス。Noが言えなければ、それが積もり積もって人生で何日分にもなる。
(9)効率よく学ばなかった
1年で習得できるものに4年も費やした、ということがある。楽器でも語学でも学習は短期集中がもっとも効率が良い。もし英語や中国語の学習方法を工夫したら、きっともっと短時間で今のレベルに到達していたはずだ(だから韓国語は失敗したくない)。そして、適切な人に正しい方法で習うことがもっとも時間とお金の節約になる。
(10)無駄とわかっているものに習慣的に時間を費やした
個人的にはテレビのザッピング、SNS、子供の頃のゲームとアニメ、一人での飲酒など、受動的な娯楽に多くの時間を費やしすぎた。
無駄を省くのは、1分を惜しんでマシンのように勉強や仕事をして大成功し経済的に豊かになるためではない。それではペットを飼うのは無駄かとか、育児は無駄かとか、おかしな議論になる。
経営とは、人・金・もの・時間の有限な資材を最大限の効果を産むように振り分けることだ。人生も、無駄を省いて有意義なことに費やすほうが、幸福だと僕は考える。それが趣味であれ、愛する人との時間であれ、一日の中で自分にとって幸せな時間を増やすことだ。
お金と時間の関係についてはまた語りたいことがたくさんあるけれど、これだけは書きたい。
世の中はお金がなければ時間や体力を使うようにできている(例;新幹線ではなく高速バスに乗る)。時間をお金に換えることは、命を切り売りしていることと同じだ。そして、歳を取ればお金を稼げるようになるかもしれないが、その時に若い時の時間を買い戻すことはできない。
お金だけのために貴重な時間を差し出しているのであれば、それは無駄なことだ。その証拠に金融投資をすればなんの苦労もなくお金が増えたり減ったりするのを知るだろう。お金を稼ぐ=時間や労力を費やすこと、という前提は簡単に崩れ去る。
ある時点から僕は「お金を稼ぐこと」と「仕事」を分けた。仕事とは「自分の才能を生かして世の中に貢献すること」であり、職業ではなく、やるべき人生の事業だ。その時間を確保するために、「お金を稼ぐこと」=職業にはできる限り時間を使わずにすむようにする。極端に言えば寝ていても銀行口座にお金が振り込まれる仕組みを作る。それにより「仕事」ができ、「お金を稼ぐこと」がより効率的になる。歳を取るごとに時間・お金・健康が増えて、思考に囚われが少なくなり、自由が拡大するような生き方が素晴らしいと思う。
最後に、無駄に見えて大切にしていること。
(1)睡眠…最低7時間の睡眠は寿命のためにも必要。
(2)食事のための時間…作るのも食べるのも幸せな時間だし、健康になれる。
(3)運動…駅までの坂道徒歩20分は自分にとっては浪費でなく投資。
(4)家族や好きな人と過ごす時間…このために仕事をしている。
(5)五感で楽しむこと…旅行やスポーツなど
残りの人生を今までより賢明に生きたいと思う。

2018/11/15

Jean-Michel Veillon & Yvon Riou 日本ツアーお礼

Jean-Michel Veillon & Yvon Riou 日本ツアーお礼
※長文です。

フランス・ブルターニュのフルート奏者Jean-Michel Veillon(以下ジャンさん)とギター奏者Yvon Riou(以下イヴォンさん)の10/31~11/12の13日間にわたる初来日ツアーが無事に終わりました。

今回は台北・関西・関東の11会場でコンサートとワークショップを開催し、300人以上の方に参加いただきました。ご来場くださいましたお客様、宣伝を手伝ってくださった方、スポンサーの宇都宮伊澤屋様、ギターを貸してくださった いがりまさし さん、会場関係者の皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

この日記は自分の記録として書き残して置きますが、誰も細かいところまで読まないでしょうから、大事なことから書いていきたいと思います。読みたいところだけ読んでください。

<ツアーの収支>

どんなに内容が良くても赤字が出たらイベントは失敗です。二人からは、交通費+宿泊費はすべて経費とし、飲食費は各自持ち、宿泊はホテルのシングル、出演料は別途各コンサートごとにウン万円という条件を出されていました。

私がプロのエージェントではないことと、ジャンさんの「小さな会場でもいいからできる限り空き日を作りたくない」という意向を汲んで、出演料についての条件は免除してもらいました。

ただし赤字が出たら私がすべてかぶり、CDの売上は別途全額を渡すことは絶対条件です。関西での宿泊は経費節減のため自宅を利用しましたが、結果的に彼らもゆっくりでき、疲れずに済みました。

経費は自分の分も合わせて70万円ほど、経費を引いた利益はそれなりのまとまった金額が出て、CDは110枚すべて売り切れました。これにはお二人とも満足していただき、「また来たい」とおっしゃっていただけました。
言い出した時点で赤字は覚悟の上でしたが、持ち出しはなく、自分としてもほっとしました。

<反省点>

初動の遅れが最大の反省です。出演条件の交渉は2017年のうちに終わっていたのですが、2018年前半は楽器店の開業に集中しており、実際にコンサート会場のブッキングを始めたのは2018年の6月からでした。

チラシを配布開始したのは7月で、半年前には作っておくべきでした。ホテルの予約に至っては10月に入ってからで、条件の悪いホテルばかりでした。もっと早く動いていれば、音楽ホールや労音さんに企画を買い取ってもらうこともできたかもしれません。また、リスクを減らすために次回はクラウドファウンディングを検討したいです。

ブッキングについては、ある会場では人が集まらず、赤字すれすれになってしまいました。一箇所の人数が多いほどチャージバック率など経済効率性が上がるので、小さな会場で連日開催するよりも、100人収容の会場を3箇所くらいに絞ったほうが良かったです。

台湾公演については今回は彼らがたまたま取った航空券が台湾のエバー航空のものだったので、思い入れからコンサートを企画しましたが、私の渡航費で利益が飛んだので、やらなくてもよかったです。期待していた観光も一切できませんでした。

東京はホテルや駐車場が高く、また都民の平均収入も高いようなので、東京だけ入場料を高く設定しても良いかもしれません。

CDは200枚あっても良かったと思います。これらを改善すれば、もっと余裕のあるスケジュールで日本を楽しんでもらい、より多くの出演料を渡せたはずです。

<運営>

今回は私一人で企画、宣伝、販売、会計、料理や洗濯などお世話、荷物の運搬、運転、通訳から前座まですべてワンオペで行ったツアーでした。2週間予定を空けてくれるスタッフなどいるわけもなく、いたとて人件費を支払えませんでした。
それは問題なかったのですが、彼らより早起きして支度して彼らより遅く寝ていたので睡眠不足が辛かったです。最も心配だった運転は意外と問題ありませんでした。そのうち何かあるとジャンさんから「ハタオ~!」と呼ばれるようになったので、すっかりお世話役が板につきました。

<主催者の意義>

毎日奇跡のような演奏を観ることができ、ファンとして、音楽を学ぶものとして最高に幸せな日々でした。毎日たくさんの音楽の話を聞き、ワークショップも含めて自分が一番勉強になりました。

また、hatao & namiの演奏を3日間見て肯定的なコメントをいただき、いま取り組んでいることに自信を得られたこと。次に出版するフルート教本に、直前になって多くの付け足すべき内容を教えていただけたことは、お金を払っても得られないことでした。

音楽を学ぶ人は、世界的な一流の演奏家や先生を日本に招いてイベントをすると、先生との結びつきが強まり勉強になりますから、短期留学よりもずっと効果的な学びが得られることと思います。音楽以外に企画や宣伝の上でも勉強になりました。

<宣伝>

今回はチラシ6000枚(配りきれず2000枚以上が余りました)、SNS、YouTube、楽器店のメルマガ、お店のホームページを使っての宣伝でした。今考えれば、フランス大使館、日本のブルターニュ関係の飲食店や雑貨店、日仏会館など宣伝協力を依頼できたところがありましたが、当初は思いつきませんでした。
ジャンさんはフランスでは実績があるので、新聞やプロフィールなどフランス語の資料をもらってそれらの機関にPRすればよかったです。
チラシは会場以外に配布先が見つからず、ミュージックプラントの野崎さんに頼んで、Flookのコンサートで配布をしてもらいました。それでもツアーが始まるまでチケットの売れ行きが悪く、ツアーが始まってからSNSを中心に話題作りを頑張りました。多くの方がSNSで良い感想を書いてくださったのも効果があり、後半になって一気に予約が入りました。
日本では知名度が低いブルターニュ音楽ですが、人気のあるアイリッシュに絡めた売り方は一切したくなかったので、そこは私の意地でした。

<ふたりのこと>

演奏が最高なのは言うまでもありませんが、二人の人柄がおちゃめで、演奏以外の時間が楽しかったです。ジャンさんのおとぼけと、無口だけどジャンさんのボケをしっかり拾ってあげるイヴォンさんのコンビは友達としても相性抜群です。

観光にもグルメにも興味がなく、いつも音楽のことで頭がいっぱいで、会場に着くなり楽器を取り出す二人。お腹が空いていても、疲れていても文句を言わず、その日のコンサートを最高のものにしようという集中力は、私には足りないものでした。
時間にルーズで起床時間も出発時間も守れないのですが、そのマイペースぶりも計算に入れて行動したのでストレスにはなりませんでした。
どんな時もユーモアと感謝の気持ちを忘れず、誠実に自分の音楽を届けることにひたむきな姿が最も印象に残りました。

<今後のこと>

外国人ミュージシャンの招聘公演の企画は2回目で、初回は8年くらい前、アメリカ人パイパーのDick Hensoldさんでした。
その時は私の純粋な音楽的な好奇心で企画しましたが、今回は「ケルトの笛屋さん」とリンクさせて、ホームページでの宣伝や予約受付やCDの販売もしました。結果的にホームページでの予約決済システムはクレジットカード手数料が高く、今後はしないことにしましたが、お店を挙げての宣伝には効果があったと思います。

赤字を出さずにイベントを終えることができたので、今後は「ケルトの笛屋さん」の事業として招聘公演を手がけることも視野に入れたいです。大手エージェントは絶対呼ばないような素晴らしいアーティストを呼ぶことで、日本のケルト音楽の振興、ひいてはお店の事業の発展につながれば、好循環を生むことができます。

以上です。今回の公演に関わってくださった皆様に、改めて感謝いたします。今後もケルトの笛屋さんの活動を支援してくださいますと幸いです。

2018/11/07

今週は地球最高のフルートを見てください!

 只今、フランスのフルーティスト、ジャンさん(Jean-Michel Veillon)のツアーの真っ最中です。毎日奇跡のようなコンサートを間近で見ることができて、主催して本当に良かったと思っています。

 ジャンさんは木製フルート、いわゆるアイリッシュ・フルートの演奏においては掛け値なしで地球上でトップの演奏家です。ジャンさんと

同じ時代に生きることができた自分の幸運に感謝したくなる、それほどすごい音楽を奏でます。

 自分の話で恐縮ですが、ここ数年、音楽がありふれすぎていて正直に言って音楽を聴くことに飽きを感じていました。昔はコンサートで感動することもありましたが、近年そんな経験は滅多になくなってしまいました。

 それなのに、ジャンさんのツアーが始まってからは毎日涙を流すほど感動する日々です。音楽って素晴らしいと改めて思っています。

 ジャンさんの音楽の素晴らしさは、言葉に書きつくすことができません。「ケルト音楽の最高峰」「究極のデュオ」そんな言葉ですら陳腐になります。来て、見てもらうしかありません。人生観が変わります。

 ジャンさんのコンサートは今週末まで開催します。
今日は関西で最後の京都公演。主催者だから断言しますが、次のチャンスはありません。今からでも、お申込みをお待ちしています。

 詳細についてはこちらからご覧ください。

 https://celtnofue.com/about/jmv.html

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  ジャン・ミシェルヴェイヨンのすごさ
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 ジャンさんの音楽を描写するのに「最高のケルト音楽」「デュオの究極」と書いても、そんなありふれた言葉では陳腐すぎて何も伝えることができません。
 だから僕は「東洋の書芸を思わせる芸術」とチラシに書きました。それが20年間近く彼らの音楽を聴いた僕が思う、彼らの音楽の核心です。

 今から20年近く前にアイリッシュにどっぷりのめりこんでいた頃、知人から二人のCDを借りて聴きました。それは一見アイリッシュと同じ木製フルートとギターを使っていながらもまったく異なる音楽でした。ダンス曲を演奏していても溢れる感情表現が、心の奥深いところを揺さぶります。ダンス曲なのに
なぜこんなにも感動するのだろう。何度と涙を流したかわかりません。

 アイリッシュが社交(セッション)と踊りのために外に向かって発散する指向性があるのに対して、彼らの音楽は聴くものの内側に染み込んでいく内省的な指向性があります。

 彼らの音楽を聴いて東洋美術に通じると感じた理由は、そのシンプルさと奥深さにあります。フルートとギターという二つの音色だけの音楽は水墨画のように単色の世界ですが、その中に濃淡があり、強弱があり、空間があります。二つの楽器がシンクロナイズしたり、片方が同じフレーズを反復したり、無拍節になったり、無限とも思われるアレンジと変化が音楽を立体にします。それぞれの楽器が書道の筆のように、力強い線と柔らかい線、かすれ、滲みを描きます。その組み合わせは白と黒だけでここまで豊かに表現できるのかと驚くばかりです。

 自身が演奏家としてジャンさんの演奏を見ていて多くの気付きがあります。

ジャンさんは、フルートは「息の芸術」であると言います。アイルランド音楽はバグパイプが根源にある音楽です。そのバグパイプの特徴が、フルートやフィドルなど様々な楽器の演奏法の元になっています。その特徴とは、音量の強弱がなく、音色の変化を意図的につけることができず、一度演奏を始めたら音を止めることができず、連続する同じ音をタングングなどで区切ることができないという制約です。そのため、アイルランド音楽は装飾音、タイミング、スウィング感を追求し、ダンス曲をノリよくするための演奏スタイルを発展させました。

 それに対して、ジャンさんの笛は様々な息の技法の百科事典で、強弱、陰影、音色の変化があり、立体的です。それが、書道の筆の運びを連想させるゆえんです。

 ジャンミシェルさんにこの感想を伝えました。ジャンさんは、ブルターニュ音楽をフルートで演奏し始めた頃、もともとブルターニュにはフルートの伝統がなく、その演奏法を探るために世界の色々な笛の音楽を聴いていたそうです。
尺八や雅楽、トルコのスーフィー(神秘主義)の笛、インドの竹笛バンスリーなどを愛聴しており、それらの楽器を学んだり、真似したことはないものの、多くのインスピレーションを受けたとのことでした。

 ダンス音楽とはダンサーを乗せるための音楽ではありますが、それだけでは僕は物足りないと思っていました。ジャンさんの音楽にはあふれるほどの表情、表現力があります。僕は、彼らの音楽を通じて、「ダンス曲で表現をする」とはどういうことなのかを学んでいるのです。

 26年演奏している円熟のデュオは、音楽の究極の形態です。
 これが最後の機会になります。ぜひ来てください。


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     2、お客様の声
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・ブログでのライブレポート Piper's Caffe
Jean-Michel Veillon &Yvon Riou まさしく今年、最高のライブでした 」

https://piperscaffe.org/main/?p=36638&fbclid=IwAR0jDVXqiQbgzn_FyC7CbJ1oXKJ2h3Ohh15oBwx6AYYCqUIKw5jordCmtJk

・本当に、素晴らしすぎました!!!
クラシックフルートも木製フルートも、これまで沢山の生演奏を観てきましたが、あんなに凄まじいオーラを放ちながら吹くフルート奏者は初めてです。
木製フルートの可能性を最大限に引き出し、フルートの鳴りも最大限に使いこなし、彼らの内から溢れでる音にただただ圧倒され、ブルターニュ音楽の奥深さを感じられた2時間でした。

・笛吹きの人は絶対聴きに行くべき。

・ブルターニュ音楽、素晴らしかったです❗️一瞬で来て良かったと思いました

・木製フルートの可能性を最大限に引き出し、想像以上にスケールの大きな世界観に心を掴まれまくります。

・本当に素晴らしくて一曲終わるごとにため息の連続でした。

・フルート=横笛というイメージだが、ティンホイッスルなど縦笛はもちろんのこと、息を使う楽器を演奏される方は必見!!

・たくさんの色、匂い、懐かしい風景など身体が感じるライブでした。

・なんだ、この音圧は!!! 息のうねりがすごい!!
 けど、繊細なビブラートはどうやってるんだ!!

・日常を離れて、自己の内面を深く深く見つめるような心が洗われる時間でした。
 息遣い、間合い、お二人の呼吸すべてが音を通して流れてくるようでした。

・心が震えました。息を呑み感じで聞き入ってしまいました。

・ジャンさんの身体全体から響いてくる音に圧倒され通しでした。

・大感動でした。2時間かぶりつきでした。

・心に届く音楽ってこういうことですね。とても幸せでした。

・侍のような芯のある、軸のぶれない演奏でした。

・あまり聴いたことがないジャンルでしたが、文化・生活・歴史が浮かびました。

・ここが日本だということを忘れてしまいました!

・ジャンさんの笛の音色は、圧倒的な迫力と優しさが絶妙に合わさっていて、音の波を身体中で受け止めている不思議な感覚でした

・至高のひとときだった。

・ジャンさんのフルートは木と言いながらエレキに違いない。
1音目から凄すぎて、ぶわぁあってなった。

週末のJMV氏ワークショップ行ってきました。
ブレトン音楽の笛奏法を開拓されてきた方だけあり、奏法面のクリエイティビティが素晴らしかったです。やれることは全部やっている感がある。変え指でちょっと変な音が出るビブラートとかトリルとか、単体で聴くと何の意味があるのかわからん奏法が、実際の演奏では全部使い分けた上で
ぶっ込まれていて微細な陰影につながっているのが凄い。


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       3、ツアー詳細
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 すべてのご予約はコンサート開演直前までメールで受け付けます。

 ご予約 メール hatao@irishflute.info まで

★11月7日(水) 京都★

【タイトル】ブルターニュの夜 in 京都
【日時】11月7日(水)18:30開場 19:00開演 21時終了
【場所】京都市 拾得 (じっとく)
    京都市上京区大宮通下立売下る菱屋町815
【料金】一般 4,000円/学割 2,000円(学割は学生証の提示が必要です)
    4500円(当日)
   ご予約 メール hatao@irishflute.info まで
★11月8日(木) 浜松

【タイトル】ミニコンサートとセッション
【日時】11月9日(木)20時~22時
【場所】スマグラー 静岡県浜松市中区肴町313−12
【料金】チップ
【内容】30分のミニ・コンサートと90分のセッションです。
アイルランド音楽を演奏する方は楽器を持ってお越しください。


★11月9日(金) 栃木県宇都宮 (宇都宮伊澤屋協賛公演

【タイトル】ブルターニュ音楽の夜 in 栃木
【日時】11月9日(金)18:30開場 19:00開演 21時終了
【場所】栃木県宇都宮市 悠日
    宇都宮市吉野1-7-10
【料金】3,000円(予約)3,500円(当日)
【ゲスト】安生 正人(ハープ・フルート)
    ご予約 メール hatao@irishflute.info まで

★11月10日(土) 東京下北沢

【タイトル】東京公演 vol.1
【日時】11月10日(土)12:30開場 13:00開演 15時終了
【場所】東京都下北沢 Com.Cafe 音倉
東京都世田谷区北沢2-26-23 EL NIU B1F
【料金】一般 4,000円/学割 2,000円(予約・学割は学生証の提示が必要です) 4500円(当日)
【ゲスト】一噌 幸弘(能管・田楽笛ほか)  
     ご予約 メール hatao@irishflute.info まで
★11月10日(土) 東京神保町

【タイトル】東京公演 vol.2
【日時】11月10日(土)18:00開場 19:00開演 21時終了
【場所】東京都神保町 楽屋
東京都千代田区神田神保町1丁目42-7
【料金】一般 4,000円/学割 2,000円(予約・学割は学生証の提示が必要です) 4,500円(当日)
【ゲスト】豊田 耕三(フルート) 大竹奏(フィドル)
     ご予約 メール hatao@irishflute.info まで
★11月11日(日) 東京高円寺

【タイトル】木製フルート・マスタークラスと交流会
【日時】11月11日(日)10:30開場 11:00開始 14:30終了
【場所】東京都高円寺 Grain
東京都杉並区高円寺北3-22-4 U.Kビル2階
【料金】受講 一般 8,000円/学割 4,000円
    聴講のみ 一般 4,000円/学割 2,000円(学割は学生証の提示が必要です)

【内容】アイリッシュ・フルートの世界最高峰の演奏家から直接レッスンを受けることができる唯一の機会です。受講生ひとりひとりの演奏を聴いて、リズム、アーティキュレーション、装飾音などについて詳しく指導します。
また、レクチャーとして、アイルランド音楽ではほとんど使われることがない、アイリッシュ・フルートの特殊技法(替え指、ハーモニクス等)を紹介します。
昼食は下の階の中華料理店「成都」のテイクアウトを一緒に楽しみましょう。
※受講は10名まで、要予約。モダン・フルートでの受講も可能です。
     ご予約 メール hatao@irishflute.info まで

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       4、CD販売
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どうしてもコンサートに来られない方はCDでもお楽しみになれます。
こちらからどうぞ!

 https://celtnofue.com/about/jmv.html