2017/05/07

寺原太郎さんインド音楽コンサート@西東京市 響き床

寺原太郎さんインド音楽コンサート@西東京市 響き床

快晴で一気に気温が上がった連休後半の土曜日。
巣鴨のフルート・ワークショップを終えて電車を乗り継ぎ西東京市のライブ会場へ。寺原太郎さんのインド音楽演奏を聴くのは67年ぶりになるかもしれない。
20代前半から尊敬する太郎さんのライブを観るのは今回の東京滞在のメイン行事である。

今回は、自転車屋さんの2階というので、どんな会場かなと思っていたら、自転車屋さんの一般の民家の二階の広間が演奏会場。
それでも30人近くの人が集まっていて、開演直前に着いた頃はすでに熱気でいっぱいだ。年配者や子供づれも多く、普段の自分のライブの客層との空気感の違いを感じる。インドのホームコンサートってこんな感じなんだろうか。
僕は最前列に席を取った。演奏者と30センチくらいの、演奏者と膝と膝とを付き合わせた距離で聴くインド音楽は初体験。もろろん生音での演奏だ。

今日はカルカッタから来日中のタブラ奏者シュロジャト・ロイとのデュオで、春のラーガを演奏。春は暑い夏を予感させる憂鬱な雰囲気で、日本のヨナ抜き短調音階に長三度と短三度が同居したようなスケールだ。

瞑想的な前奏から始まり、音の階段を一段ずつ登り降り、音階の絨毯を敷いてゆくような笛。そして、タブラが入ると笛が勢いづいてゆく。ゆっくりなティンタール(16拍子)から速い16拍子。お互いに仕掛けあい、補い合い、愛情と敬意が溢れる掛け合いだ。タブラは突っ込んだり焦らしたり三連符で挑発したり、奇想天外な手が楽しい。

休憩を挟んで後半はタブラのデモンストレーション。期待通りの超絶技巧を楽しませてくれた。最後に近所にお住まいだというシタールの武藤さんが加わりジュガルバンディ(二重奏)で夜のラーガ。インドの夜のラーガは明るく、生命感に満ち溢れている。

考えてみれば、インド音楽は何度も観たけれど、ライブで二重奏を観るのは初めてだ。しかも、フルートとシタールという異なる声。武藤さんの演奏は丁寧に音を紡いでゆく。シタールにリードさせてあげつつ、間を埋めてゆく笛。歌い方の異なる二つの楽器を楽しむ。そして2人に伴奏されてのタブラのソロ。自由闊達、床からタブラの振動が伝わってくる迫力のある演奏だ。最初は14拍子、後半は速い16拍子。指折りリズム周期を数えて、ぐるぐる回る。瞑想的な前奏が宇宙的な時間を感じさせるなら、リズムは星の運行を感じさせるとも言える。いくつかの見せ場を経て、シタールとフルートのユニゾンからアクロバットを決めたあと、見事に着地した。

今回、寺原さんとロイさんは初顔合わせで、演奏の新鮮さを保つためにリハを一切しなかったと言うけれど、ここまで合うことに、いつもながら驚く。息の合った共演だった。

インド音楽は一見瞑想的で精神的だけれど、実は知的でスリリング。囲碁や将棋の名人対決を見ているかのような丁々発止のやり取りが楽しい。そして激しい応酬の興奮と、予想通りのところで決まったときの安堵感。その場かぎりの生きる歓びを奏で、讃える音楽なのだ。知れば知るほど、聴けば聴くほどに面白いインド古典音楽。これからもファンであり続けるだろう。










0 件のコメント:

コメントを投稿