2018/12/14

音楽家日記 コミュ障でもコンサートがしたい

<音楽家日記 コミュ障でもコンサートがしたい>

最近読んだ経営書は、新規のお客様を増やしリピーターになってもらう方法がテーマだった。

中身はお客様の名前を覚えて呼んであげましょうとか、来店したお客様にお礼状を送りましょうといった陳腐なアイデアなのだけど、要するにお客様と心理的に近づこうということで、これってコンサートの集客にもあてはまることだ。

毎回コンサートの集客のためにチラシを撒き、ホームページやSNSで宣伝し、お客様リストにメールを送っている。

しかしコンサートではお客様とゆっくり話したり、心理的に近づくことができない。単にコンサートの日は時間がないこともあるが、特に僕の場合は極度に人見知りなので、自分から話しかけに行くことができない。

僕は自分の楽器店の店番をしていても、お客様が来店すると心拍数が上がる。長年の生徒さんでも、名前を呼ぶだけで緊張する。

コンサートでは、街で他人に話しかけるのとは違って自分を知っていて自分の音楽に興味がある方が来ているのだから遠慮する理由はないのだけれど、それでもおじ気づく。

むしろお客様のほうが音楽家に対して遠慮する気持ちがあるだろうし、音楽家から話しかけてもらったら嬉しいには違いないだろうけれど。

僕はとにかく人の顔と名前が覚えられない。
だから「初めてですか?」と訊いて「3回目です」と答えられたら? 「山田さん、いつもありがとうございます。」と近づいて、「いえ、松田ですけど。しかも初めてですけど」と答えられたらどうしよう? などと考えてしまう。

そのくせ人前で演奏するのも、大勢の人を前に話すのも平気なのだけど、これは慣れの問題なのか。

だから、僕は決して「お高く止まっている」とか、「お客様に興味がない」わけではないのです!

そんなコミュニケーション障害ぎみの自分でもコンサートはしたいし、たくさんの人に音楽を聴いてほしい気持ちがあるから、工夫をしている。

それはSNSやYouTubeや出版物や楽器店を通じて広く知ってもらうことで、お客様と1対1の関係を築く一本釣りに対して、網を広げるような感じなのかもしれない。釣りの例えが良くなければ、電話とラジオの違いでも良いのだけど。

そのお陰で全国どこに行ってもお客様に来ていただけるのだけれど、それは最初のきっかけにすぎず、そこからファンになっていただき、次回また来ていただけるかは、その時の自分次第なのだ。

演奏が良いことはもちろんだけど、お客様をおもてなしする気持ち=ホスピタリティが大事だ。それは一人ひとり話しかけるとかでなくても、ステージでの振る舞いとか、MCとか、音楽に向き合う気持ちとか。お客様に良い音楽を楽しんでほしい気持ちって何も言わなくても伝わるから。

人気ってわかりやすいから、面白い。

「いい音楽をしているから」「上手いから」「話題だから」が新しいお客様と出会うきっかけになっても、それだけでは次に続いてゆかない。毎回、楽しみに来てくださる熱心なファンの方、そしてそのファンの方がまた新しいお客様を連れてきてくださることが、確実に音楽の輪を広げる力になるのだ。


何度も飽きずにコンサートに来てくださるファンの方々には深く感謝しています。そして、もう少し、お客様の気持ちに寄り添えるように、自分も少しだけ変わりたいと思います。

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