2016/04/14

北欧の笛ハンター

先日、金沢で「北欧の教室」と名付けられたコンサートシリーズに出演してきた。
地元金沢に北欧文化を広めようと活動している方の企画で、これまで4回行われている。北欧というと弦楽器が盛んで、ニッケルハルパ、ハーディングフェーレ、ギター、ハープと続いてきたが笛は初めて。確かに、北欧の笛を吹いて演奏活動している人って、日本では僕以外にいるのだろうか……? 北欧でさえ笛は珍しいのに。

これまで笛と笛吹きを求めて北欧を旅をして学んできたけれど、当然ながら日本で披露する機会はほとんどなく、普段は全くの趣味として一人で楽しんでいた。

今回は良い機会をいただいたので、スウェーデン各地とノルウェーの12種類の笛を吹いて、その音楽と楽器の背景についてお話を交えながら演奏をした。それぞれに面白いエピソードがあって、ついつい2時間半もの大講義になってしまった。


アンケートからは、案の定というか、退屈した方の声がいくつかあったけれど、概ね好評ではあったようだ。そりゃあ、笛や音楽に特別の知的興味がないお客さんにとっては、お話よりも良い音楽を聴きたいよね。それを承知で、このような機会を与えてくださった主催者の英断には感謝します。

アンケートを読むまでもなく日本では北欧音楽そのものがアイルランド音楽のようには人気がない上に、北欧の笛は音階やリズムが日本人には馴染みがないものが多く、「商品」にはならないことは、重々理解している。
そのあたり、「笛の魔術師」ことヨーラン・モンソンさんはプレゼンテーションが上手く、たくさんのファンを獲得していて本当に素晴らしい。僕が北欧の笛の魅力に気づいた大事なきっかけの一つは彼のコンサートだった。

僕がほとんどお金にならないにも関わらずわざわざ北欧に出かけて音楽を学んだり音楽家と交流するのは、ひとつは純粋に笛そのものが好きだから。笛の持つ可能性や多様性に触れると、わくわくして、もっと知りたい、自分でも奏でたいと思ってしまう。これは性分なのだ。

北欧は各地に多様な笛があるので、笛マニアにはたまらない。東欧や中国雲南省もそんな匂いがするので、笛を求めていつか行ってみたい。希少植物を探して世界中を旅する人は「プラントハンター」と呼ばれているそうだ。僕は、自分のこういう性分を勝手に「笛ハンター」と呼んでいる。多分、この知識や経験が求められるとしたらコンサートじゃなくて楽器博物館や音楽大学の講義のような気がするけれど。

もうひとつの理由は、魅力的な楽曲や音楽を求めて。その音楽を奏でるためには、その笛を手に入れて習熟しなくてはならないのが、北欧音楽の独特なところだ。アイルランド音楽であれば、だいたいはティン・ホイッスル1本でまかなえてしまうのに、北欧音楽では、その笛でないと音色や味わいが表現できない。面倒なことではあるけれど、それだけに色々な笛を吹くことで音楽に広がりが出ると感じている。

とは言っても、せっかく学んだものを自分だけで楽しむのはもったいない。ケルトの笛屋さんとして地道に情報発信や普及活動をしたいし、hatao & namiとして、僕たち風にアレンジして、お客さんが楽しめる形でプレゼンテーションしたい。

実は、これらの笛を活かして「北欧音楽オンリー」のCDを製作する計画がある。北欧では、自分の地域の笛以外は演奏しないものだが、このように様々な地域の笛を紹介するのは例がなく、資料としても面白いものになるのではないかな、と思っている。どうぞ、お楽しみに!















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