2016/12/27

学習、あるいは学ぶことについて

「学習、あるいは学ぶことについて」

 皆さんが学んでいること、学びたいと思っていることは何でしょうか。学習について最近考えがあり、シェアしたいと思います。

 僕は30歳になった頃、アイリッシュを習いに来た台湾人と出会ったのがきっかけで台湾にハマり、中国語を学び始めるようになりました。いえ、正確に言えば、その前に大学で1年間履修してはいたのですが、笛ばかり吹いていた学生時代でした。

 中国語を学ぶのは独学で、テキストを買って時間のある時に読んだり、語学ラジオを聴いたりというもので、ムラっ気があり、たまに台湾に行く時だけ勉強して日本ではほとんど勉強しなかったので、長い間使いものにはなりませんでした。学習を開始した8年目の今年からようやく先生に習い始めた次第です。

 亀の歩みでしたが今では台湾や中国で100%中国語だけで意思疎通ができるようになりましたし、多くの友達も得ましたが、それでもまだ中級者どまりです。

 英語もまた仕事で使う必要があるため、語学は英語と中国語を毎日リスニングしたりyoutubeを見たり何かしら学習しています。思えば長くダラダラとやっているものです。

 同じように、20代の後半にバグパイプに憧れて、いろいろと楽器を買って手を出してみました。これも独学でした。といのは、自分はアイルランド音楽をほぼ独学で習得したので、独学にある程度自信があったのですね。ところが、自分では楽器のメンテナンスができず挫折。数十万円を投資したのに、長いこと、押入れの中にしまっていました。

 ところが2年前に、吹きやすい「どこでもパイプ」を作ってもらってから、普段のコンサートでも日常的にバグパイプの簡単な曲を演奏するようになり、つい先日、挫折したバグパイプを出してみたら、なんと吹けるようになっていました。練習しないで演奏ができるようになったなんて、魔法みたいでした(どこでもパイプの宣伝ではありません)。その代わりと言いますが、その数年間の間にリコーダーや柳の笛や6孔オカリナや様々な笛の演奏はある程度習得できました。

 中国語とバグパイプ、この2つのことについて言えることは、本当に学びたいことは、継続すればいつかは身につくのだということです。しかし、こんなにも時間が必要だったのでしょうか。自分の語学学習の効率の悪さは自覚していて、趣味と割り切っていましたが、もっと早くマスターして、韓国語とかフランス語など違う言語を学ぶこともできたはずです。

 最近「生産性」についての本を読みました。投入する資源(お金・時間など)に対する成果をはかるのが生産性の概念です。生産性の概念を学習に当てはめて考えれば、学習の効率を上げることができます。

 僕は効率的な学習の鍵は、メンターの存在、成果の上がる正しい学習方法、一定の期間集中して取り組むことだと思っています。もし僕が1年間台湾に語学留学して、一切の音楽活動をやめて中国語の習得に専念したら1年で今のレベルよりも上達していたでしょう。同じようにイギリスでバグパイプの先生に毎日習っていたら、もっと上達できていたでしょう。当時は結婚していましたし、日本での音楽活動もありましたから、その思い切りはなかったのです。

 何かを10,000時間の練習をすればプロレベルになれるし、100冊の本を読めば専門家レベルの知識を身につけられると聞いたことがあります。もちろん才能の有無は関係しますが、自分は音楽については10,000時間は演奏したし、100冊は本を読みました。

 人生に使える時間は有限です。僕は長年かけて音楽とケルト北欧の管楽器について学んできました。いまから新しい人生を切り開くために何か学ぶとすれば、もっと短期間に深く学ぶことができる方法があるのではないでしょうか?

 むやみに学習時間を投入するのではなく、より効果的に学習する方法に目を向けたいと思っています。最後に、僕が音楽以外の分野において、これから学びたいことを書いておきます。普段の生活に学びを取り入れつつ、優先順位の高いものから習得していきたいと思っています。

 フランス語、韓国語、投資、経営、豆食、和食調理、栄養学、病気予防の知識、中国医学、お茶やコーヒーの淹れ方と作法、仏教思想、瞑想と心のコントロール、内観、心理学とNLP、ヨガ、ウォーキング。こう見ると、けっこう自分って東洋人なんだなと再認識します。

2016/12/25

習慣を変えて1カ月経ったのでシェアします。

誕生日を迎えた先月から、人生をもっと劇的に変えてみたいと思って、習慣を変えるように心がけて1か月が経ったので、その経験を皆さんとシェアします。

前から習慣には興味があって、最近でもメンタリストDAIGOさんや茂木健一郎さんをなど有名人も本を書いていますが、習慣を変えることは人生をよりよくする古典的なテクニックだと思います。

僕は20代の頃から、オリジナルの手帳を使って習慣のチェックリストを作ったりしていたのですが、1年もたたずに挫折することがしばしばでした。そこで、今回は自分のスマホ中毒(笑)を利用して、スマホでチェックリストを作りました。使ったアプリはiOSの「リズムケア」です。いくつかのアプリを試して一番自分に合っていました。画像のように、yes-noだけではなく、回数、数字、メモなど自分で設定でき、とても使い勝手が良く、しかも無料です。

まずは最初の1週間のうちに、習慣に関する本をamazonで取り寄せて読み込みました。良い習慣を続かせて、悪い習慣を辞める方法については色々な本が出ています。それを参考に、自分に適した目標を設定しました。

僕が習慣づけを志した理由は、40代を目前に、自分の人生の目標である伝統音楽センターの設立をするためには、今の実行スピードではこの人生では達成できないと思ったことと、そのためにはできる限り健康で長生きしなくてはならず、健康面の問題を無視できないと思ったためです。

そこで、目標設定には、「健康」「仕事」「学習」の各テーマを中心に、こまかく作りました。各項目は、実行しながらより良い方法があれば、少し改善しました。

ひとつひとつ、何をしているのかお話します。

・朝のヨガ 10分
最初は朝のストレッチとしていましたが、ヨガが精神と健康に
良いと知り、途中から切り替えました。youtubeで「朝ヨガ」と検索して10分の動画を見ながら綺麗なお姉さんと一緒に練習します。以前は朝起きたらメールがSNSのチェックをして布団から30分くらい抜け出すことができませんでしたが、ヨガをするようになり心身がすっきりし、やる気が出て、起きてすぐ活動を開始できるようになりました。ヨガは習いに行く前に、動画で自分で実践できることが分かったので、深めたい項目です。

・朝のスムージーと納豆
朝食については和食や洋食など試した結果、あまり食べると朝眠くなり、疲れることを体感しました。おそらく、消化器官から来る疲労だと思います。そこで、ジューサーを購入して、母から教えてもらったレシピ(を少し改編して)でスムージーを飲んでいます。
小松菜1把、キャベツ1枚、人参4cm、リンゴまたはキュウイ半分、黒ゴマ、きなこ(台湾の友達からもらったミックス粉末を使っています)、蜂蜜を自家製豆乳で混ぜます。流動食だけでは唾液が足りず吸収率が下がるため、噛むために自家製納豆を食べます。納豆も様々な健康作用があります。

・歯磨き、歯間ブラシ、マウスウォッシュ
歯磨きだけでは虫歯が防げないことが分かり、3ステップケアを朝と晩に毎回しています。

・朝のトイレ掃除
自分が使った後にトイレの床を掃いて、便器を使い捨て紙タオルで
拭くだけです。3分でできます。トイレ掃除は金運が上がると言われており、スピリチュアル方面でも効果があるようですね。トイレが綺麗だと芳香剤が不要になり、断捨離としても効果的です。

・15分以内の掃除
掃除機やゴミ捨てなど普段のルーチンの他に1つ余分に掃除します。窓を拭くとか、網戸を洗うとか、洗濯機を洗浄するとか。掃除は楽しいので熱中する前にやめるのがコツです。これをすれば、大掃除で苦労しなくて済みます。

・5分で目標と計画を読む
自分の人生の目標でもいいし、何かのプロジェクトでもいいし、1年の計画でもいいし、書いたものを読み返します。これを意識すると方向性を意識して仕事でき、つまらないことに時間を割かなくなるのでお勧めです。

・自重トレーニング 10分
腕立て、腹筋、背筋、スクワットを10回×3セットしています。僕に
足りないのは筋力だと思ったので設定しました。自重トレーニングは自宅でできて器具が要らないし、仕事の合間にすると、気分転換になってお勧め。

・資産管理について学ぶ 30分
投資の本を読む、株価をチェックする、金融取引をする、預金を計算する、投資のプランを立てる、金融商品を調べるなど。何かお金に関する勉強や作業をします。小さな積み重ねが、後々大きな差を生む分野だと思います。

・読書 30分
毎日、少しずつ読書します。その時読みたい本でOK.僕は料理本やインテリアの本を読む日もあります。音楽をかけず、電話をoffにして完全に集中するのがポイント。タイマーをつけて集中して読むと30分で結構な量が読めます。

・瞑想 15分
静かな個室で電話をoffにして、目を閉じて呼吸に集中。瞑想や座禅のハウツー本は色々出ています。瞑想の効果は色々と書かれていますが、自分は集中力がアップして疲れが取れると感じます。

・「セッション」のトピックを一つ読む 15分
僕の専門分野であるアイリッシュの英語掲示板です。色々な話題が毎日更新されるので、情報を仕入れるため、また英語学習のために読みます。時間がもったいないので電車で読むことが多いです。

・午前中にメールを返信 60分
夜は疲れていて精神状態が悪く、仕事のメールをすると眠れなくなるので、朝に1時間くらいかけて一気に返信、付随する作業もします。終わったメールは受信箱から他のフォルダに移して、毎日受信箱をカラにします。タイマーをかけながら作業すると効率的です。

・移動中の語学リスニング
歩いている時、電車の中で教材やポッドキャスト・ラジオをリスニングします。僕の場合は英語と中国語で、その日の気分で聴きたいものを聴きます。ついでに、お風呂の中や髪を乾かしている時も聴きます。

・ウォーキング
毎日徒歩5キロ、または自転車10キロを目安に歩きます。家で仕事をして外出する用事がなければ、散歩やジョギングに出かけます。家と駅(やその近くのスーパー)を往復すると3キロです。

・楽器練習 60分
やはり、ネットや電話をオフにして、その日に必要な練習、やりたい楽器を1時間は最低練習します。

・腹八分目
食べ過ぎると内臓が疲労するので、少なめに食べるよう心がけます。特に主食のコメやパスタに気をつけます。

・寝る前のストレッチ 10分
寝る前にストレッチすると、疲労回復や睡眠の深さが違うように思います。youtubeではストレッチのビデオもいろいろあります。

・枕元に温水用意
夜中に目が覚めて台所に入って冷や水を飲むと目がさえてしまうので、用意します。起きたらすぐにお白湯を飲みます。

・明日の予定を確認
翌日の手帳を見るだけです。明日の予定を把握しておくと安心して眠れますし目的意識を持ってすっきり起きられます。

・布団に入ったらスマホoff
暗い部屋でダラダラとスマホを見る癖があったのですが、30分くらいあっと言う間に経ってしまいます。目に悪いし、眠気がなくなります。睡眠の方が大事。

・7時間寝る
早起きについては色々な本で書かれているもはや常識ですが、僕は早起きよりも睡眠時間を重視しています。と言うのも毎朝6時に起きるなどと決めると、仕事で深夜に帰宅した日などは、朝がつらくなり、すぐに挫折するからです。
僕は6~7時間で目が覚めるので、11時に寝れば自然に6時に起きます。睡眠不足で早起きするよりも、しっかり休む方が心身に良く、効率も上がると思います。

以上のことについては、それぞれ、専門家の本やyoutubeがありますので、調べてみると、効果的な方法や効用について知ることができます。

ルーチンをする際にタイマーはすごくお勧めです。スマホのタイマーを使っていますが、時間が来たら強制的にやめて、次のことをします。どうしても時間内にできなければ、やり方を改善するか、設定時間を変えます。

そのほか、書いてはいませんが、お酒を一人で飲まないルールも続いています。
食事については色々とルールを課しています。料理している間はお医者さんや栄養士さんが話す健康系のyoutubeを見ています。コーヒーを緑茶に換えたり、届いた郵便物は即開封したり、洗い物を食事後すぐする、靴を揃えるなど、細かいことを心がけています。

1か月試してみて、心身ともにすごく調子が良くなりました。
やることを決めておけば何も考えなくても勝手に身体が動いてくれるので楽でもあります。続ける秘訣は、続けることにこだわらないことだと思います。僕は朝のルーチンは生徒さんが来たり練習に出かける11時まで済ませるようにしていますが、前日が夜遅かったりすると、ルーチンを達成できないこともあります。
そういう時はイライラせず、次の日の楽しみにします。

新しい習慣を身につけるには最大で3カ月かかるそうですが、さあ、この先2か月続けていけるのか、とても楽しみです。

皆さんも、日頃こころがけている良い習慣があれば、シェアしてくださいね。


2016/12/22

星降る夜のうた

もう今年もあと1週間と少しとなりました。

あさってクリスマス・イブは、どんなご予定でしょうか。楽しみな予定がある方も多いことと思いますが、もしまだ何もご予定がなければ、ぜひ私達のコンサートもご検討ください。お昼ですから、夜のディナーには間に合いますよ!

≪星降る夜の歌 ≫

【日時】2016年12月24日(土)14:30開場 15:00開演

【会場】S'n緑an (シンリョクアン)
大阪市北区大淀中2-6-6 TEL:06-6450-8688

【料金】前売2,500円 当日3,000円


いつもとは違う特別なコンサート。お勧めの理由がいっぱいあるんです。

まずはプログラム。クリスマス・イブですから、クリスマスにちなんだ曲を特別に演奏します。カタロニアの民謡のEl noi de la mare、きよしこの夜(みんなで
ご一緒に)。

日本のクリスマスは恋人の日でもありますから、恋に関する曲も演奏。
スコットランドの「恋のわずらい」、「Ae fond kiss (やさしいキス)」、
ノルウェーの結婚行進曲(3枚目CDに収録の新曲)。

夜空の綺麗な冬ですから、「星降る夜のうた」「月を探して」「三日月の聖夜」
「夜間飛行」など、星や月に関する曲を特集。

来年2月に先行発売が決まった3枚目のCD「森の時間(仮題)」の新曲も
演奏。

そして、オルガンや、3種類のバグパイプを演奏します。
イングランドのノーサンブリアン・スモール
パイプス、スウェーデンのセックピーパ、どこでもパイプ!
さらに、ニッケルハルパ奏者の「ねぎ君こと」伊藤 駿介君もゲスト参加。

思い出に残る、やさしい気持ちになれるコンサートにしたいと思います。
残りあと数席となりました。ぜひ、ご来場をお待ちしております。

【内容】
hatao & nami 2016年最後のコンサートは、クリスマス・イブの夕方に。
1年の総集編として、今年のベスト曲を演奏し、クリスマスにちなんだ曲も
お送りします。会場は大阪福島区の古民家ギャラリー&カフェ
S'n緑an (シンリョクアン) 。
心の深くにしみいる音楽とともに、静かなクリスマス・イブをどうぞ。

【予約先】
メールにてお申し込みください。
hatao@irishflute.info


2016/12/12

【ケルト・北欧楽器 交流会のお知らせ】

【ケルト・北欧楽器 交流会のお知らせ】

毎年初春に開催している交流会ですが、来年は規模を広げて稲岡大介先生をお迎えし、西川智子先生、上原奈未先生、hatao 先生との計4 人の講師が集い、開催することとなりました。
皆さまが日頃の教室では出会えない音楽愛好家の輪を広げるとともに、音楽の楽しさや演奏する喜びを分かち合う機会にできればと思っています。この音楽に興味がある方なら、受講生以外でも、しばらく音楽から遠ざかってしまった方、初めての方にも楽しんで頂ける内容をご用意しております。皆様お一人一人が楽しめる一日にいたしますので、ぜひお気軽にご参加ください。
朝10時から15時半まで、昼食を挟んで発表、講習、クイズやゲームなど様々な催しをします。レッスン生だけでなく、この音楽が好きな人が集い、出会い、交流を深める会になります。ぜひ予定にして下さい。

【日時】 2017年2月19日(日)10時~15時半

【会場】 Spice bar Sound Boots
 大阪市西区阿波座1-2-10
 地下鉄「本町駅」21,22番出口徒歩2分

【参加費】 4000円(ビュッフェ食事込み)

お申し込み…定員50人。各講師までご連絡下さい。
詳しくは、以下のPDFをご覧ください。
www.irishflute.info/2017students_party.pdf

2016/12/10

僕たちの生きる時代と、僕たちの生き方

日本の現在そして将来についてはあまりいい話を聞かないこの頃。過去最高を更新し続ける生活保護世帯、増え続ける非正規雇用、増え続ける年金負担と社会保障負担、学資ローン(奨学金)問題、進まない男女平等やLGBTへの理解、外国人排斥運動、増税や円安(自国通貨の叩き売り)…。

これらの問題の根幹にあるのは、超高齢化、人口減少という国内的な要因と、グローバル化(人・物・金・情報の流動の自由化 )やITの進歩といった世界的・人類的な要因がある。

日本と世界の歴史を学ぶと、太平洋戦争に巻き込まれていった経緯や、戦後アメリカに占領され西側諸国に加わったこと、バブル経済とその崩壊など、歴史的な出来事は時代の必然だったと思われる。

例えば太平洋戦争はアジア諸国が次々と欧米列強に支配された歴史の流れの中で、日本が独立を保つか植民地になるかというギリギリの選択を迫られ、帝国主義を歩んだ結果だった。

その時どの党の誰が首相になっていても、選択を迫られることは避けられなかっただろう。その後のベビーブームと大人口増による 内需が呼んだバブルは、戦争での人口減の当然の結果だったし、バブルの崩壊もまた当然だった。

その時々の政治家も国民も必死に考えて、頑張って、ベストな選択をしてきたと思うが、世界的な時代の流れの前には、できることは限られている。

現代、日本が陥っている状況もまた時代の流れとしては当然の結果で、誰が政権を摂っても難しい舵取りとなるだろう。それは、少子高齢化、人口減、内需の低下、海外との競争といった時代の流れだ。

安倍総理は、その中で自国通貨のたたき売りによる海外投資や旅行者の呼び込みと輸出増、規制緩和よりも既得権益の保護、若者よりも高齢者の優遇という政策を取ったわけだけれど、それだけでは
立ち行かないので武器や原発の輸出、カジノの解禁という危険なものにまで手をだしてしまった。

どうして僕の国はいつもこうなんだ!と思うけど、時代の流れだから仕方ないと諦めたくもなる。

人類の文明の一つの単位が成熟し終わる時には大きな社会の変化や犠牲がともなう。前の大変化は帝国主義といくつもの戦争だった。今、また時代の変化の時期なのだと思う。犠牲を払うのは常に若者と貧困層だ。

インターネットの時代がきて、今度は人工知能の時代がやってくる(その次は宇宙開発か?)。
堀江貴文さんによれば人工知能が発達すれば、多くの人は職を失うが、その代わりに人間は労働から解放されて好きなことができるそうだ。そうだろうか。僕は、今のように、その業界を早く築いたものが富み、多くの人はただ機械に仕事を奪われるままだろうと思う。日本には富裕層が寄付や慈善事業をするという考え方が一般的ではないので、ますます心配だ。日本の場合はその前に、移民や新興国との競争にさらされるだろう。

この時代の変化に気づかない人は、頑張っているのに年収が下がる、物価が上がり貯金が目減りし、仕事を失う。
こういったことが、知らないうちに身の回りに起きてゆくのだ。のんきに酒を飲んでいる場合ではないよ。

日本は、沈みゆく大国だと思う。移民を受け入れるのか少子化対策を積極的に打つのか、どっちつかずで、ただ現状を維持しようとしている。
船が沈みつつあるのに、老いた船員と乗客たちは誰も自らその穴を埋めようとせず、問題を直視せずに沈むその時まで楽しもうと宴会をしているかのように見える。

それなら僕は自分で救命ボードを用意する。自分とその周りの人だけでも、なんとかしたいと思う。

ゲームはルールを作った人が圧倒的に有利だ。なぜならルールを知り尽くしているし、ルールを変えることだってできるからだ。
あなたが勝てないのは誰かの作ったルールの中でプレイしているから。そのゲームの中で勝つために努力するのではなくて、 常識を疑って、自分でルールを作ることもできる。

組織に頼らず自分で稼ぐ力を身につけて、いくつもの言語を話し、複数の国に生活と仕事の拠点を持ち、助け合える仲間を持つ。

生活を見直し、生活の無駄を削ぎ落とし、健康に留意し、コツコツと資産を築き、分散的に投資して、何が起きても資産を失わないようにする。

こうすればどんな世の中でも自分とその仲間を守ることができると信じている。戦時中の祖父の世代は困難に立ち向かい、たくましく戦後の日本の繁栄を築いた。僕たちも、強くたくましくなろう。

変化に対応したものだけが、生き残ることができる。

2016/12/07

ずっと健康でいるために

先月の誕生日に、今後の自分の人生で何を達成したいかについて記事を書きました。「欧州伝統音楽の施設の建設」は実現できない大すぎる目標だとは思ってはいません。多大な時間と労力が必要だろうと思っています。

その実現のためにずっと若々しく健康な心身で高いパフォーマンスを維持しなくてはいけません。病気にかかると休んでいる日の分だけ目標達成ができる日が遠のき、悪い生活習慣によって寿命が縮まればそれだけ目標達成に使える時間が減ります。だから病気をしている暇などないのです。

38歳を迎え中年と言われる年頃になり、良い生活習慣を作ることが健康の維持に欠かせないと考えて、朝の時間を使って毎日、健康と予防医学について学んでいます。

常識的に言われていることですが、食事、運動、睡眠、ストレスの管理の4つを中心に学んでいます。歯の治療をし、現在地点を知るために人間ドックに行く予定です(何の病気も見つかりませんように!)。

現在、自分が辞めた悪い習慣と続けている良い習慣をシェアします。

・辞めた習慣
酒を家で一人で飲むことを辞めました。結果、朝早起きが出来るようになり仕事の効率が上がり体調も良くなりました。毎日300円使っていたので、お金も貯まりそうです。

もともと喫煙や夜更かしやコンビニ通いやギャンブルなど問題ある習慣は無かったですが、布団に入ってからのスマホは辞めたい習慣ですね…。

・毎日続けている習慣
乳酸菌や酵母を取るためにぬか漬けや白菜づけを作って毎朝食べます。
豆乳、納豆を自作し毎日摂ります。
3食自炊します。
朝の野菜のスムージーも試してみます。
必ず5キロ以上は歩きます。歩かない日は10キロは自転車に乗ります。
自重トレーニングを15分します。
歯磨き→歯間ブラシ→マウスウォッシュを毎朝と毎晩します。

あとは健康に関係ないですが、毎日読書を30分と英語・中国語の学習を30分します。理想的には家計簿もできたら良いですが、一度挫折しています…。

病院通いや薬を飲むのって、お金も時間もかかるし、面倒ですよね。

今この時間に楽な方に流れると、将来ずっとシンドイことが待っています。今良い習慣を身につけておくと、将来ずっと健康でラクチンです。

僕は本来は面倒くさがりでズボラなので、将来に面倒くさいことを避けるために、今から防止したいと思います。

皆さんが健康に気を付けていること、身につけて良かった習慣も
シェアしてくださいね。

2016/12/01

2017年の春は自転車旅をします!

2017年の春は自転車旅をします!

 来年4月11日~5月23日まで、自転車で43日間の旅をします。
自転車ツーリングとしては最長の挑戦ですが、楽器店を開くという人生の大きなイベントの前に、やりたかったことを実現します。

途中、各地でレッスンやライブ、笛の販売をしながらケルトの笛の楽しみを広めていきます。また、東京の弟、宮城県の兄、札幌の両親とばあちゃんに会いに行きます(自転車で)。家族・リユニオンの旅でもあります。

今のところの宿泊地の予定です。

4月11日草津市 12日四日市市 13日-14日名古屋市 15日豊橋 
16日浜松市17日静岡市 18日三島市 19日静岡県松崎町 
20日下田市 21日熱海市 22日-23日逗子市 24-30日東京都

5月1日宇都宮市 2日那須市 3日猪苗代市 4日福島市 
5日-6日仙台市

それ以降は札幌の実家を目指して岩手~青森を北上する予定です。
※予定は体調と天候次第です…。

 もしこの間で、僕とお会いしたい方、僕のライブやレッスンを開催したい方、僕を泊めてやってもいいよ!という方がいらっしゃいましたらご連絡ください!

5/23は「ばんまい」のライブなので、ここで凱旋ライブをして家にゴールしたら、きっと感動的だろうなと思います!

2016/11/28

Irish Carnival

いよいよ今週末の土曜日、大阪のアイリッシュ・カーニバルが開催されます。

この催しは、簡単に言えば「アイリッシュ音楽で、1年で最高に楽しい思い出を作ろう!」ということです。

関西・名古屋から集まった中堅どころの4つのアイリッシュ・ユニットの演奏が一気に楽しめるばかりでなく、その前後になんと合計4時間以上もの大オープン・セッションがあったり、「ケルトの笛屋さん」「グレンミュージック」の出店があったり、関西で活躍する笛3人による笛トリオの前座があったりと、盛りだくさんの内容を用意しています。

楽譜
https://celtnofue.com/play/download/download_detail---id-828.html

会場は大阪の中心、本町の歴史あるビル。
広い店内で、食べて・飲んで・演奏してというドンチャン騒ぎをしましょう。

関西には「ケルトシットルケ」というコンピレーション・ライブイベントがありますが、ただ見るだけではなく、お客さんが参加・交流きる催しがあればいいなと思い僕が声をかけて企画しました。

主催者みなで一致団結して、この音楽シーンを盛り上げていきたいと思っています。

ですので、この機会に楽器を演奏しない人も、公開している楽譜を予習してぜひライブ前の初心者セッションから参加してください! きっと、これをきっかけにアイリッシュにハマることうけあいです。

100人の集客をめざしています。まだスペースはあります。
温かい気立ての良いミュージシャン一同が、ご参加をお待ちしています!
 
 

2016/11/21

心想事成

11月21日。僕は38歳の誕生日を迎えました。

今日まで健康に生きてこれたことは世界で一番の幸運だと思いますし、健康に産んで育ててくれた両親に感謝します。

子供の頃、誕生日は祝福される日でしたが、大人になってからは、自分と関わるあらゆる人に感謝する日です。

歳を取るのは楽しいです。
一年、歳を取るごとに健康になり、できることが増え、不安や心配が減り、経済的に自由になり、心身が若くなる歳の取り方をしたいものです。

歳を重ねるごとに、自分が何のために生きているのか、より明確に意識するようになりました。

人が仕事をし生きていくのは、自分に与えられた身体や感情や能力といった資源を生かし切り世の中に貢献するためです。 その貢献の度合いに応じて感謝がお金として返って来る。これが仕事の本質ではないでしょうか。

 歳をとるのは、ただ生きた時間が長くなったということではなく、その時間の分だけ学び、経験し、影響力を増やし、世の中に貢献できる範囲や度合いを広げてゆくことに意義があります。

 僕は、これまで20年近く学んできた大好きなヨーロッパの伝統音楽によって多くの人に貢献することができる喜びを日々噛み締めて、目の前の仕事に誠心誠意打ち込んでいます。

僕には6年前の2010年の正月に思い描いた夢があります。

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誰かの人生がより良くなれる場所を作る。
テーマは「出会いと成長」。

それは、人生を考えるきっかけになる良質な本や映画を自由に貸りられる図書館です。

色々な分野の魅力的な人の講演会が開かれる講堂です。

素敵な音楽を聴くことができるコンサートホールです。

手作りの作家さんや、美術の個展が開かれるギャラリーです。

セラピストやマッサージの達人が時々やってきて、治療を受けられる診療所です。

地域の農家が、有機栽培の新鮮な野菜や果物を売りにきます。

腕のいい料理人による、おいしい料理やコーヒーを楽しむことができます。

何かに秀でた人が集まって、教えあっています。

常に魅力的な人が集い、一人で来てもすぐに人と仲良くなれます。

ひとりぼっちになりたいときに、静かに、暖かく、そっとしておいてくれます。

旅人が、噂を聞きつけて遠くから体を休めにやってきます。

そこは、人と人が、心で結びつく場所です。

その建物のそばには、温泉も、果樹園も、牧場も、運動場もあります。

全国から、人生を学びに、自然を学びに、心と体を癒しに、人が集まってきます。

そんな場所が作れたら、この人生に思い残すことはありません。

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壮大な夢ですが、今でもその思いは変わらずに持ち続けています。

僕は演奏家で音楽教師でありながら、昔から憧れる人は経営者ばかりでした。
読む本も経営者の本ばかりでした。

それは大学生の時に自転車旅行で出会った、石見銀山でブティックを経営する群言堂の松場登美さんという、文化や伝統を大切にした志のある経営者の姿を見て感銘を受けたのがきっかけかもしれません。
その後、群言堂は大成長を遂げ、今は全国各地に支店を持っています。

CoCo壱番屋の創業者、 宗次徳二さんとの交流も、食と経営と音楽文化を体現する経営者として大きな影響を受けました。  

そのため、20代の頃から半分はアーティスト的な思考、もう半分は経営者的な思考で仕事をしてきました。その2つをミックスして、演奏・教育・普及活動の3つを通じて伝統音楽の喜びをより多くの人と分かち合うことをミッションに活動しています。  

このように、ずっと「音楽・食・自然・教育・学び・出会い」を結びつけた施設を創りたいと思っていたのですが、オカリナ奏者の宗次郎さんと和歌山の舞台でご一緒したことがきっかけで、 人生の最終到達地がより具体的にイメージできるようになりました。 宗次郎さんは茨城県で「オカリーナの森」という施設を運営されており、まさに自分が思い描いていた施設のイメージのとおりでした。  

http://sojiro.net/contents/ocarina.html  

この規模であれば楽器店、伝統音楽カフェ、音楽練習場、楽器工房、宿泊施設など賄えるでしょうし、日本におけるヨーロッパ伝統音楽の拠点にできるだろうと思います。 

日本のヨーロッパ伝統音楽を世界に発信し、世界からここに人が集まる場所になります。  

これを作るには数億円規模のお金や多数の常勤スタッフが必要でしょうから、そこまでビジネスを成長させる必要があります。
100個の夢のうち99個が叶わなくても、これが叶えば人生は大成功です。 

マイホームもマイカーも贅沢な趣味も要らないから、すべてをこの夢に注ぐつもりです。  

僕がこれを創りたいのは、決して自分個人の経済的な成功を目指しているからではなくて、伝統音楽の素晴らしい世界をより多くの人に楽しんでもらいたいし、またこういう場所が世の中には求められていると思うからです。  

この感覚は市長が公園や図書館を整備するのに似ているかもしれません。 
市長がそれを造るのは、本人が公園の管理人や司書になりたいからではありません。 

その大きな夢を実現させるために、今日から1年後、39歳の誕生日になる2017年の11月21日(火)に、京都に小さな伝統楽器店を開きます。そのために株式会社を設立します。  

見て・触って・弾いて・聴いて・遊んで買い物ができる、国内初の伝統音楽専門の楽器店。 楽器販売の他にレッスン、中古楽器の買取販売、教本や楽譜や国内外のCDの販売を手がけます。 
ヨーロッパの伝統音楽を愛する人が集い、出会い、喜びを分かち合う場所にします。 
こういう場所があれば、絶対に楽しいと思うんです。ワクワクします。  

それとともに、これまで以上に演奏、音楽制作、レッスン、伝統楽器の教本のプロデュースや、伝統音楽を愛する人の役にたつ情報・流通・サービスのインフラの整備に力を注ぐつもりです。  

38歳はこれまで育ててきた夢を叶える、チャレンジの歳になります。  

3年前に作ったティン・ホイッスルの無料冊子は10,000冊を配り終えようとしています。 10,000人のティン・ホイッスル吹きを生む、幸せ種を植えたことになります。 
来年はその先の出版がたくさん控えています。  

来年は本場の伝統楽器店から学び、楽器職人とつながるために長期でヨーロッパ、アメリカを旅行します。 また、台湾、中国、韓国、マレーシアというアジア諸国を旅し、コンサートやレッスンで交流を深めます。  

病気などしている暇はないので、健康と安全にもこれまでよりも気をつけて、人生の道を歩みます。  

来年のある時期になったらクラウド・ファウンディングで資金調達を始めます。 
面白い、力を貸してやろうという大口の投資家の方のご協力も募集しています。 
僕と一緒に夢を見て、一緒に歩んでいただければ、幸いです。

2016/11/09

舞台で何を伝えたいのか


音楽家が舞台に立って演奏している時、何を感じ、何を考えているのでしょうか。

音楽家は立場が違うだけで聴衆と同じように、様々なことを思考し感じながら演奏しています。

音楽家の感情や思いは音や声や言語コミュニケーションの聴覚と、表情や動作による視覚を通じて伝わっています。

それと同時に音楽家は聴衆が何を感じているかを感じ取っています。これによって、音楽家と聴衆との感情の相互作用で会場の一体感が生まれ、コンサートは双方にとって素晴らしい音楽体験になりえます。

僕は、ライブ演奏とは音楽を媒介した人間同士の感情と脳がシンクロすることがその真髄だと考えています。

人間は言語を使って思考を共有することができます。文字や録音された音声であれば時間や場所を超えることができ、たとえば古代ギリシアの哲学者の思考を共有することもできます。文章は論理的、具体的に物事を伝えるのに適しています。

比べて音楽は、特に歌詞がない音楽であれば、具体的な物事を表現することはできませんが、イメージや感情など抽象的な物事を伝えることができます。

例えば「丸くて甘いリンゴ」という言葉を読んでそれぞれが「丸くて甘いリンゴ」をイメージするでしょうが、そのリンゴは赤かったり青かったりするかもしれません。

では「真っ赤な丸くて甘いリンゴ」と言えばより正確かというと、人によってはひとつだったり箱いっぱいだったり、木に成っていたり、いろいろな状態をイメージをするでしょう。

しかし、「丸くて赤くて表面がツヤツヤしていて木に成っている真っ赤な丸くて甘いリンゴ」のように表現を具体的にすればするほど、そのリンゴを食べた時の感情からは遠ざかっていきます。

音楽はリンゴを食べた時の幸せな感情をより確実に伝えられる可能性があります。もちろん、リンゴを食べて幸せな歌です、というとリンゴが嫌いな人にはその幸せな感情は伝わらないので、曲のタイトルも悩むところではあります。

僕は、音楽は演奏者と聴衆の心を直接つなぐケーブルのようなものをイメージしています。

僕がアイルランドで見た景色を描写することはできませんが、その景色を見たときの感情を音楽に乗せて伝えることで、お客さんは同じ感情を感じることができるかもしれません。言葉よりもより正確に伝えられる可能性があるのです。タイトルや曲間のトークはそのイメージを言語的に補足します。

だから演奏する時には自分が何を感じているか、どんな景色を想像しているかを大事にしたいと思います。
慣れていない曲だと技術的なことに意識をフォーカスしてしまったり、いつも同じ曲を演奏していると単純作業のようになってしまい、何も考えずに演奏してしまうおそれがありますが、そうならないために、1曲ずつの視覚的なイメージや感情に一瞬で没入するように心がけています。

音楽家も人間ですから、その日の体調や気分によって毎回違う状態で演奏します。体調が悪かったり演奏に不安があったり、共演者や主催者に不信感があったりすると、楽曲の世界に入る妨げになります。そういう音楽家の状態は聴衆は正確に伝わっています。

音楽や言葉など物事が発するメッセージにはポジティブとネガティブとがあるそうです。ポジティブとは愛、優しさ、喜び、楽しさ、光、安心、暖かさなどで、ネガティブは怒り、恐れ、攻撃、不快感、孤独、闇、不安や不信感、冷たさなどです。

ポジティブな素晴らしい音楽を聴いた時、心を柔らかく揉みほぐしてくれたような気持になり、安心と活力を受け取ります。

ネガティブなメッセージにも人を魅了する力があり、うまく利用すれば人を行動させたり、悪い状況を打開するエネルギーになりますが、イライラしたり、攻撃的になったり気分を落ち込ませたりもします。

自分は、文章や音楽にいつもポジティブなイメージを発していたいので、自分の音楽どんなメッセージを発しているのか舞台の上では常に意識しています。

もっと若くて未熟だったころ、共演者とモメて共演者不信に陥り、卑屈になり、ヤケになって舞台に立ったことがありました。舞台上でふてくされて、演奏も当然うまくいきませんでした。

きっと怒りや不信や嫌悪やあらゆるネガティブな感情の汚物を巻いていたことでしょう。あの時のお客様には本当に申し訳なく思いますし、音楽家として失格であると大反省しました。自分の生涯最悪の舞台でした。

あのような舞台を2度と作らないようにしようと誓いました。

今でも曲に馴染んでいない曲や初めての場所の大勢のお客様などの状況で緊張や不安や自信のなさに囚われそうになることがあります。お客様は自分がどこの馬の骨だと思っているだろう、演奏を失敗するのをあざ笑うだろう、うまくいくわけがない…。

そんな時、「自分はそんな感情を伝えにここに立っているのではない、お客様にポジティブなメッセージを伝えるためにここにいるのだ」と、自分の目的を思い出すようにしています。

そうすると、体と心のこわばりがなくなり、暖かい気持ちでお客様と向き合うことができます。舞台と客席は感情の鏡ですから、お客様も音楽家に暖かく受け入れられている安心感を感じ、一体となることができるのだと思います。

僕はヨーロッパの伝統音楽を演奏しています。外国の文化や知識や学国での体験を紹介することも大切なことではありますが、お客様に伝えたいのは普遍的なことなのです。

2016/11/03

節酒はじめました

最近、ある元女優さんや鳥取県で町おこしとして大麻栽培をしていた会社の代表が大麻不法所持で逮捕されたことが話題になりました。最近は海外のいくつかの国や、大麻をもっとも禁止してきたアメリカの一部州でさえで合法化の動きがトレンドになっていますが、日本では依然として厳しく禁じています。

大麻が中毒性がある危険な毒物なのかどうかについては、調べると色々な情報が見ることができます。どうして日本で大麻が禁止されているのか? こちらのアニメ動画は面白かったです。

https://www.youtube.com/watch?v=aaOTAdp0TX8

そんな大麻に厳しい日本ですが、酒に対しては諸外国に比べて非常におおらかです。欧米人、特にイギリス系のアングロサクソン人の国々が日本に来て何が楽しいかと言うと、酒におおらかなことだそうです。コンビニや自動販売機で昼でも買えますし、路上でも電車でも飲んでも法律違反にはなりません。そこが彼らには信じられないようですね。

ニュージーランドに行った時のことですが、コンビニでビールが見つからず、酒屋に行って買ったことがありました。パチンコの景品交換所のようにひっそりとしたところで、ビールを買うと紙袋に入れて渡されました。まるで、中毒者が人目に隠れて飲むような印象です。路上での飲酒もできません。アイルランドでも缶ビールを飲みながら路上演奏していたら、警官に叱られました。スーパーでもビールは冷えた状態では売っていないですね。

アジアはイスラム圏を除けばそこまで厳しくはないですが、台湾なんかでも、飲食店で食事といっしょに飲酒する習慣がなく、餃子店でさえビールは売っていません。タイでは、夜間のコンビニでの酒類の販売はできません。


アルコールについては、大麻よりもずっと中毒性や害悪があるとも言います。

今日はyahooでこんなニュースに出ていました。

 「飲酒でがん 世界で死者36万人
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161103-00000017-jij_afp-int

世界70億人のうち36万人なら、 がんよりも急性を含むアルコール中毒や依存症や飲酒運転のほうが深刻な問題だと思いますが、飲酒が肥満や糖尿病や心疾患や脳卒中など成人病の原因になることはまちがいないですね。

アイルランド音楽とは切っても切れない飲酒文化ですが、日常的に飲酒するのは気を付けた方がよさそうです。

僕はお酒が好きで、種類は問わず、 美味しければなんでも喜んで飲むのですが、酒に強いので、最近はついつい飲酒量が増えて、一人で毎晩、長時間飲むことが習慣になっていました。
夕食時にビール1杯、あとは深夜11時~1時まで日本酒、焼酎を2合ほど。

酒の怖さは習慣化することと、耐性がつくことです。
僕の父も祖父も酒が大好きで、祖父は昼から飲んでいました。父は毎日大量の日本酒を飲み、糖尿病患者です。兄弟もかなり飲むようです。家系的に自分もそうなる可能性が非常に高いと自覚しているので、 先週から「節酒」を始めました。

理由は健康、経済、仕事のためです。健康面は、メタボや糖尿が心配な年頃です。肝機能障害も気になります。経済面では、酒代は1日300円、月間12000円と決めていましたが、これは年間15万円にもなります。10年間で150万円です。飲酒が、僕が大好きな経済的な自由を奪うのです。
仕事面では、お酒を飲むと仕事がどうでもよくなってしまい、ついつい夜更かししてテレビを見ながら一人飲酒したりするのですよね。朝も寝坊します。


そんなことを思って、以前に3年ほど前まで5年間禁酒していた時期がありました。
一切飲まなかったのです。でも完全に禁酒すると、飲み会でまわりをシラけさせたり、お酒をプレゼント頂いたときに相手をガッカリさせたりしてしまいます。

だから、ルールを決めて 「節酒」にしました。

ルールはシンプルです。

・1人でお酒を飲まない。
・店や飲食店でお酒を買わない。

友達と飲むのはOKですし、プレゼントや1杯おごってもらうのならOKです。

あれほど毎日飲みたかったのに、飲まないと決めたら全然欲しくなくなりました。
やっぱり僕は中毒でも習慣でもなかったみたいです。意思の問題ですね。
飲まないで変わったことは、夜12時には眠れようになったことと、朝がだるくなくなったことです。

もちろん人と一緒の時は喜んで飲むので、これを読んでも気にしないでくださいね。
海外旅行に行ったら絶対ご当地ビールを楽しみたいですしね。

まあ、これが普通の人のお酒との付き合い方ですよね。
好きすぎて、ちょっと距離感が近すぎたみたいです。

2016/10/22

生きることについて

昨日は一人娘の18歳の誕生日だった。
18歳と言ったら、もう大人だ。運転もできるし、結婚もできるし、最近は投票もできる。僕とお酒を飲むことができないのだけが残念だ。お互いにここまで元気にすごせたことに感謝しているし、ちょっと気持ちが軽くなったような感覚もある。

最近、悲しい自殺や事故死の話を聞く。人は結構簡単に死んでしまうものなのだと思う。生きるということは1つしかないのに、死ぬ方法ならいくらでもあるよな、などと、おかしな屁理屈を考える。だから、自分もあなたもあの人も生きていることは奇跡的だと思う。

もう少し若いころ、僕も死を意識したことは何度かあった。今思えば何をそんなに悩み苦しんでいたのか思い出せないくらいだけれど、とても苦しかったことは覚えている。一つ言えることは、あの日、死ななくて良かった、ということに尽きる。なぜなら今こうして人生を楽しむことができるのは、生きているからだ。

苦しくて心身が弱っている時、死は甘美で、もっともマシな選択肢で、救いにさえ見える。死の誘惑に取りつかれると、毎日そのことばかり考えるようになる。
あのとき一線を越えていれば、もし、アルコールを大量に飲んで正常な判断能力を失っていれば、そして痛覚神経が麻痺していたら、今ここにいなかっただろう。

あれから良いことも悪いこともいくつもの経験をし、少々のことでは動じなくなり、あの頃のことを思えば何事もたいしたことではないと思えるようになった。孤独感や不安感に鈍感になり、人生のすべては自分の責任と自由であると思うまでに強くなった。この先何があっても、あの時のように苦しむことは、おそらくないだろう。

死を選ばなかったあの日から、自分は夢の中を生きているのではないかと時々思う。本当はあの時死を選んでいて、気を失って長い長い夢の中にいる。眼が覚めるとあの日のあと時に帰っているが、もう手遅れになっている、そんな妄想をした。

致命的な事故や病気や犯罪から生き延びた人は、その後の人生を神様からの贈り物だと思って大切に生きるそうだ。良くわかる。自分も今の人生をボーナスステージだと思っているし、そう思えば、何が起きても怖くないと腹をくくって生きていられる。

早まらなくても誰もがいつかはこの世から別れる運命にあるのだから、大切に生きたいし、周りの人は大切に生きてほしい。早まらなくても、死はあちらからやってくるのだから。

あなたがいまどんなに悩み、苦しみ、困難な状況にあっても、生きている限り絶対に状況は変わる。変わらないことなど、この世に何一つとない。誓ってもいいが、10年後の今日、今と同じことで悩んでいる確率はセロだ。

会社が潰れた、不倫がバレた、悪事に手を染めた、いじめられて孤立している。とてもしんどいと思う。でも時間をやり過ごせば絶対に状況が変わる。そういう時はよく寝て、美味しいもの食べて、楽しいことをしてほしい。

僕は今のオマケの人生は誰かのために生かされているのだと思っている。だから自分が成功することよりも人に喜ばれ、人の役に立ち、人のためになる生き方をしたいと思う。それがいつ死んでも後悔がない生き方だからだ。

もしあの時の自分のように苦しい思いをしている人がいれば、いや、あの時に僕に言ってあげたい。生きてさえいれば、絶対に良くなるし、いつかは生きていて良かった思う日が絶対に来る。僕が言うのだから間違いない。

2016/10/19

アイルランド音楽情報メルマガのご案内


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 みなさん、こんにちは! ケルトの笛のhataoです。

 2011年まで約10年間続いてきたアイルランド音楽情報専門の
メールマガジン「クラン・コラ」が、今月より復刊しました。

 復刊号はこちらでご覧になれます。
 全国のライブ情報だけあり、すごい情報量です。
 
 http://melma.com/backnumber_00098839/

 毎月10日に全国のアイリッシュのライブ情報などが掲載された
「情報編」が、20日にアイリッシュに関わる様々な方からの投稿
を集めた「読物編」が発行されます。

 まぐまぐ!、またはMelma!で購読手続きができます(無料)。

 まぐまぐ!    http://www.mag2.com/m/0000063978.html
 Melma!    http://melma.com/backnumber_00098839/

 明日が読物編の発行日になりますので、アイリッシュ・ファンの
 方はぜひご登録ください。

 以上、お知らせでした。

2016/10/10

音楽を誰から習うか

昨日は、関東から1日レッスンを受講するためにお客様が宝塚の自宅までお越しになりました。

1日レッスンは、遠方の受講生のために用意したプランで、朝10時から夜10時の12時間の間であれば練習し放題で受講料は15,000円です。90分ごとにお茶休憩をして、食事は2食まで提供します。僕が生徒の立場で考えたとき、先生を一人占めできるそんなレッスンが受けられたらよいなあと思って始めました。

このレッスンをこれまで長く続けていますが、遠くは沖縄県、北海道からわざわざお越しになる方もいらっしゃり、思った通り需要はあるようです。

僕のレッスンは、技術を習うのも曲を習うのも、可能な限り細かな要素に分解し、言語化・可視化し、体系だてて教えるスタイルです。楽譜は必要に応じて使いますが、練習時に楽譜を使おうと使わまいと最終的には楽譜なしで出来るようになるまで教え、練習してもらいます。

僕はこれまで何人ものアイルランド人の先生から笛のレッスンを受けましたが、みな例外なく楽譜を使わずに先生のすることをまねさせるスタイルでした。
まったくテクニックの説明や基礎練習をしないで、曲の中でそれを学ばせる先生が多かったです。テクニックについて質問しても、自分が何をしているのか指摘されるまで考えたこともなかった、という風な先生さえいました。この分野には聖典は存在せず、みなが独学なので、先生によって技術用語や方法が様々で初心者は混乱することも多いかと思います。

そのようなスタイルのレッスンを受けるのは僕は好きですが、僕が日本人を教える立場で同じことをすると、うまくいかないことが多かったです。やはり皆さん楽譜を欲しがりますし、技術や音楽知識を噛み砕いて丁寧に説明をすると満足する生徒さんが圧倒的に多いようです。

僕は言語学習が好きなので音楽と言語を結び付けて考えることがあるのですが、僕達が日本語を習得した赤ちゃんのころ、お母さんなりまわりの人が、こちらが理解していようがいまいが日常的に大量に日本語を聞かせていましたよね。僕たちはそうしてネイティブの日本語話者になりました。

ところが中学生になって英語を学習する過程においては、僕たちは教科書を使い、単語や文法や読解や作文やリスニングなど系統だてて体系的に言語を習いました。その結果どれほどの人が英語を習得できたでしょうか。この方法でネイティブレベルに到達するには途方もない時間と労力が必要になるため、学校の学習では到底足りません。

それらの細分化された要素をレンガのように積み重ねることによってネイティブに限りなく近づいてゆくことは可能ですが、学習を続けていると、どうしても越えられない壁があることにも気が付かされます。

例えばそれは文法や単語のミスというよりは、語彙の選択や間の撮り方や抑揚やタイミングといったもっと微妙なことなのかもしれません。外国人の日本語を僕たちが聴いても、こういった基準を持って、彼らがネイティブ話者なのか努力を重ねた外国語学習者なのかを瞬時にしかも正確に区別できます。この違いは、努力では簡単に埋まるものではありません。

「アイルランド音楽を習得したければ日本人に習うな」という言説を見たことがあります。その意味するところは、アイルランドに行って、アイルランド人から習ったり交流する中で学習した方が、おかしな癖や偏見がつかなくて良いということなのでしょう。

伝統音楽においては正統な装飾音、伝統的な音色、リズムが習得できているかどうかが非常に重要で、それは言葉や楽譜を尽くしても習得できません。

音楽も言語のように細かく刻んだ要素で断片的に習うよりも、まるごとの姿まま大量の音楽に触れるうちに、ネイティブの感覚を体得できるのかもしれないという考え方には僕は賛成します。僕達が日本語を母親から習得した時がそうでしたから。確かに、何年もアイルランドに暮らしながら音楽ができる環境が手に入るのであれば、そうしたら良いでしょう。僕もできればそうしたかった。

ですが、僕達大人の学習者、しかも日本に住んで日本語を使って生活をしている人にとっては、短期旅行でアイルランドに行く前に、日本で習えることを習ってからアイルランドに行くことの方が効果は大きいのではないかと思います。

 日本人の先生といっても色々な志向やスタイルの方がいます。僕は楽器の操縦方を習得するために体系だてた学習メソードや合理的・論理的な教え方に強いですが、感覚的な教え方はできません。また、伝統や地域的なスタイルには弱いです。僕だけが最高の教え方だとは思っていませんので、ぜひ色々な先生に会い、話し、自分の要求に見合う先生からレッスンを受けてみてください。






2016/09/15

音楽家とお金

音楽家がどうやって収入を得て、生活を成り立たせているか、というのは一人の音楽家として大変に触れがたい話題だ。

音楽家は音楽を愛して、音楽のために人生を捧げている人種なのだから、お金儲けや日々の生活のことよりも自分の音楽をどう深めていくかに心血を注いでいる。そう、思われているフシもある。

世間は音楽家を僧侶か何かだと思っているのかもしれない。だから、夢を壊すようなことは言ってほしくない。音楽家もそれを敏感に感じ取って、あまり生活臭いことや生々しいことは言うのを避ける。

だけど現実問題、一人の社会人として生活していかなければならない。親にいつまでも頼っているわけにもいかないし、携帯も必要だ。楽器だってお金がかかる。年頃になれば結婚だってしたいし子供だって欲しい。

僕の音楽仲間で、「自分はお金儲けのために音楽をやっている」と放言した人がいた。 その割に全然稼げている様子はなかったけれど(笑)。
反対に、素晴らしい音楽をしているのにお金と潔癖でいたがっている人もいた。

あるいは、自分はO万円以下の謝礼の仕事は絶対に引き受けない、 という人もいた。生活費はアルバイトして稼いでも、音楽は自分だけのものでいたいという人がいれば、どんな屈辱的な仕事でもやるから、音楽以外の仕事は絶 対にしたくないという人もいた。色々な人がいるもんだ。

周りの音楽家を見ると、プロとして活動していても、この業界は全然食えないんだと、つくづく思う(改めて言うけれど、だからといってその人の音楽の価値とは別の問題だ)。

だからみんなレッスンをしたり、CDを売ったり、色々な収入を組み合わせてなんとか続けている。
食えない世界なのに、かたくなに演奏だけで生計を立てようとすると、歪みが出る。

ライブのお客様の顔が1000円札に見えると言った人もいた。ライブでの演奏の良し悪しよりも入場者数で一喜一憂する。ライブ当日に雨が降ると気分最悪に なる。ライブ会場で食事が出るかどうかを確認せずにはいられない。そうなると、現場が殺伐としてくる。表情に出るし音に出る。

昔、ある先輩音楽家が「あの人は商業主義で音楽をやっている」と他人のことを批判していたが、流行歌を演奏したからと言って稼げる金額など知れている。

ある人は、自分の生徒が他の先生と会ったというだけで無視したりいじわるをしたそうだ。そうやって生徒を囲い込んだって、レッスンできる生徒数には限界がある。 ほかにもライブのチャージバック率がどうとか、CDの販売手数料だとか。

限られた資源を奪い合おうとするから、そうやって気持ちのゆとりがなくなるんだ。

音楽家は演奏の技術や音楽の仕組みは習っても、お金の稼ぎ方は習わない。
だから、自分の能力をお金に変えるのが上手な人がいれば、下手な人もいるんだな。

お金が無いことは不自由だ。
一つはしたいことができないから。
もうひとつは、したくないことをしなければならないから。

僕はどちらもゴメンだ。
 それに40歳や50歳にもなって、数千円で傷ついたり傷つけたりするのは大人としてみっともない。そんなことがしたかったんじゃない。

「プロミュージシャン」の定義が「演奏を主たる収入源とするもの」とするなら、それはすごく明快でいい。

だったら僕は必ずしも「プロミュージシャン」でなくてもいいと思う。素晴らしい音楽家ではありたいけれど。

そんなことより、自分が今一番したい音楽をして、ライブの主催者もお客様もハッピーになること。たとえ規模が小さくでも、そのサイクルを回してゆくことが幸せな音楽活動を続けることなんだと思っている。

だから、それを可能にしてくださっている主催者やお客様にはいつも感謝の気持ちを持っていたい。

小さなマーケットの中で、 誰が多く仕事を取ったとかどうとか考えるよりも、マーケットの規模を大きくしなきゃ。みんな食えてないなら、みんなが食えるにはどうしたらいいかを考えたい。

 競争力よりも周りの人を応援できる力をつけたいと思うこの頃である。

2016/09/05

ティン・ホイッスルはオカリナのようになれるか

日々、ティン・ホイッスルやアイリッシュ・フルートなどのケルトの笛を日本に広める活動をしている。

僕は個人的な音楽の好みはケルト&北欧の伝統音楽に偏っていて、 それ以外聴くことはほとんどない。演奏の方面でも、ポップスやクラシックや映画音楽をケルトの笛で吹きたいとは全然思わない。

しかしケルトの笛屋さんを経営するにあたって、楽器というのは単なる道具なのだから、僕の個人的な音楽の嗜好を押しだすと、返ってこの笛の用途を狭めて、お客様を縛ってしまうことを危惧した。

例えばリコーダーが最も華々しくその性能を発揮するのは古楽だし、ティン・ホイッスルが一番魅力的に聞かせられるのは伝統音楽だ。そして、それらの音楽を演奏するために練習している人が最も多いだろう。それは事実なのだから、笛屋さんでは伝統音楽の普及というソフト面にも力を入れている。たとえば無料の楽譜ダウンロードや、CDや国内外の演奏者の紹介だ。

だがティン・ホイッスルを吹きたい人は、伝統音楽愛好家だけではない。映画音楽やアニメやゲームを通じて出会う人も多いし、クラシック音楽を背景に持つ方が吹くケースも多い。だから、色々な使われ方があっていいと思うし、むしろそのほうが楽しい。

伝統音楽がマイナージャンルな日本においてこの楽器を普及させるには、伝統音楽だけではない魅力や楽しみ方を発信することが必要だ。
だから、僕はフルートやリコーダーの世界に顔を出し、その楽しみ方を学んできた。「ケルハモ」は、伝統音楽に壁を感じているクラシックやアンサンブル経験者にも入りやすい、世界にはまだない試みだと自負している。

※ケルハモ…ティン・ホイッスル(またはリコーダー)による、合奏曲の楽譜の製作販売。

https://celtnofue.com/store/cellhamo/celhamo-about.html

先日、オカリナの通販では国内最大手と思えるテレマン楽器を訪問し、国内のオカリナ愛好家のことや楽器販売の成功の秘訣を伺った。オカリナの成功方法はティン・ホイッスルでは同じように使えるわけではない。

オカリナとティン・ホイッスルとで状況が違うのは、 以下4点だ。

(1)年齢層
(2)プロ・プレイヤーの数とアマチュアの層の広さ
(3)フェスティバルで発表する文化。
(4)国内メーカーの豊富さと品質の高さ



オカリナは中高年が多く、ティン・ホイッスルは、それに比べると若い人や学生が多い。
 プロ奏者やスタープレーヤーが少なく、個人で楽しみ、セッションにも参加しない人が大半だ。

何しろオカリナには、フルートやリコーダーと同じ、同種楽器での合奏の文化がある。そして、伝統音楽やクラシックなどの特定の音楽的な背景がないために、むしろどんな音楽でも楽しめる。
音域はやや狭いがすべての半音階が出るので、ポップスやジャズやクラシックなどジャンルの対応範囲が広い。その上、リコーダーやフルートに比べて手軽に楽しめる印象がある。楽器の値段も、全体的には安い。

僕は個人的にはオカリナの音色はピュアすぎて面白味に欠けるし、歴史や文化的な背景がない音楽には興味が持てないのだけど、音程が自在に操れて歌声のような人間味があり日本人の感性には良く合うのは良く分かる。

僕はティン・ホイッスルに楽器としての魅力や可能性を感じているので、どんな形であれこの楽器が
多くの人に親しまれて欲しいと思っている。楽器はすでに充分に性能が良いものが出ているので、オカリナのように広がるためには、魅力的な演奏者の登場、魅力的な楽曲、魅力的な楽しみ方が不可欠だ。先日の豊田耕三君のアイルランドのコンペティション入賞が象徴するように世界に通用する日本人演奏家がいることは素晴らしいことだと思うし、アイリッシュに限らず、この楽器を魅力的に演奏する日本人奏者がもっともっと続いてほしいと願っている。そして、応援もしたい。

また、アメリカのように世界に通用する国産ティン・ホイッスル工房がどんどん出現してほしいが、それはまず日本国内の市場が大きくならないといけないのだろう。


イタリアで生まれたオカリナが日本で独自の発展を遂げ、日本ならではの楽しみ方がされているように、伝統音楽が背景にあるティン・ホイッスルも、その枠を超えて日本独特の形で日本人に愛されることを願い、これからも普及に力を注いでゆきたい。

2016/08/11

民族音楽 20年の変化


人類の文明にとって18世紀の産業革命と同じくらいインパクトがあるというIT革命。
インターネットや携帯電話がまだ身近ではなかった1990年代から暮らしは大きく変わった。それは当然、日本において外国の民族音楽をとりまく状況にも大きな影響を及ぼした。

僕がアンデス音楽やアイリッシュを演奏し始めた1990年代後半、インターネットはまだそこまで一般的ではなかった。日本のYahoo!はサービスを始めた頃で、まだ白黒画面の掲示板も盛んだった。PHSでさえ、持っていない人が多かった。

1980年代からのフランスやイギリスでのワールドミュージック(世界の民族的なポップスや伝統音楽)の流行の影響で、日本でもケルト音楽や中国音楽など世界の音楽の小さな流行があり、当時まだ勢いがあったタワレコやHMVといったCD店には広い民族音楽CD売り場が設けられていた。演奏家や評論家が書いた伝統音楽の紹介本が次々に出版されたのも90年代後半だ。

ビジネスの世界では良い情報を持った人が勝つ。地価や株価の取引はもちろん、外国の最新の流行だとか、新しい技術もそうだ。それは民族音楽でも同じだ。当時、民族音楽の本当の姿について深く知ろうと思えば、外国語の文献を苦労して手に入れて読むか、留学したりフィールドワークをするしかなかった。
だから、その国の音楽家を知っているとかその国で音楽活動をした人が苦労して知り得た情報には価値があり、それをお金に換えることができた。
つまり本を出したり、コンサートで紹介したり、CDに解説を書いたり、現地からの音楽家を呼んでコンサートを企画したりすることだ。

その音楽が好きな人は情報に飢えている。ネットの掲示板で不確かな情報を交換している人にとって、価値のある情報を持っている人は神様だ。
だから、情報を持っていた人にはお金が集まり、その人の言動には信頼と価値があるとされ、権威を持つようになった。
海外では常識のことでも、ちょっと話すだけで聞いた人は目を見開いて喜んだし、レッスンでエラそうなことも言えたのだ。

それから20年が経ち、世の中は変わった。海外の音楽家が自らSNSで日常を配信し思いを伝え、YouTubeやiTunesで時差なく音楽家からリスナーに直接、音楽が届けられる。海外旅行の障害は減り現地に気軽に音楽を聴きに習いに行ったり、音楽家がプライベートな旅行で来日することも簡単になった。情報はこちらから制限しなくてはならないほど溢れている。日本の音楽家が海外の音楽家と一緒にCDを作ったりコンサートすることも簡単になった。
情報のインフレで、情報の価値が下がり、かつて情報をもとに仕事をしていた人は成り立たなくなった。その上、その人の音楽が海外の音楽家と同じ物差しで評価にさらされるようになった。日本だとか日本語だとか関係なく、その人の音楽そのもので勝負しなくてはならなくなったのだ。

リスナーや演奏家を志すものにとって、なんと幸福な時代だろう。そして、一世代前の民族音楽家はそのままでは厳しい戦いを強いられることになった。

変化を正しく認識して、壇上から降り謙虚に若い音楽家や海外の音楽家とともに歩んでゆける人が、生き残って行けるのだ。